Construction column
施工管理技士受験資格の改正が発注者支援業務に与える影響はある?1級技士補資格を取得すべきかも解説します!
2023.6.29
工事現場の責任者として、主任技術者や監督技術者が配置されます。その際に必要となるのが施工管理技士の資格です。
発注者支援業務を行う場合、施工管理技技士の資格は最も身近な資格と言えるかもしれません。
その施工管理技士の資格が2021年度から改正されました。そして、2024年には施工管理技士の受験資格が改正されます。
本コラムでは、施工管理技士受験資格の改正点や、改正後の1級技士補について解説します。
施工管理技士受験資格が改正される
建設業界の深刻な人手不足を背景に、2021年4月1日の制度改正により、「施工管理技士補」の資格が創設されました。
それに加え、「新・担い手三法」の法案改正も理由のひとつとされています。
新・担い手三法は、「建設業法・公共工事入札契約適正化法・公共工事品質確保促進法」の3つの法律のことです。
これらの法律の施行の目的は、高齢化や労働者不足が深刻な建設業における労働者の確保・育成にあります。
施工管理技士補の創設の目的は、監督技術者の専任緩和を行うことです。
1級管理技士補の資格を取得した場合、監理技術者として認められるため、監理技術者の補佐を務めることが可能になります。
施工管理技士の資格取得には、第一次検定と第二次検定に合格しなくてはいけません。
しかし、この改正により第一次検定に合格すると施工管理技士補の資格を取得することができるようになりました。
なお、2級施工管理技士試験に合格した場合も、1級施工管理技士と同様、施工管理技士補の資格が得ることができます。
ところが、現状では、2級施工管理技士補は何かの補佐ができるような資格ではないことに注意が必要です。
取得しておけば資格手当が支給される点や、転職で有利になる、今後2級施工管理技士補の資格で就業できる分野が出てくる可能性があるなど、メリットも多いと考えられますので、取得を考えても良いでしょう。
2024年には、施工管理技士試験の受験資格の改正が予定されています。
詳しくは、別で記載しますが、受験資格が大きく緩和されることが予想されていますので、発注者支援業務に携わりたいと考えている方は、是非とも注目しておいてください。
1級施工管理技士受験資格の変更内容とは
現状、1級施工管理技士の資格を取得しようと考えた場合、第一次検定から受けなくてはいけません。
1級施工管理技士の第一次検定を受けるには、以下のような受験資格が必要となります。
学歴 | 実務経験年数 |
大学、専門学校の高度専門士 | 卒業後3年以上(指定学科以外:卒業後4年6月以上) |
短大、高等専門学校(5年制)専門学校の専門士 | 卒業後5年以上(指定学科以外:卒業後7年6月以上) |
高校、専門学校の専門課程 | 卒業後10年以上(指定学科以外:卒業後11年6月以上) |
上記以外 | 15年以上 |
なお、2級施工管理技士の資格を取得していれば、学歴や実務経験を問わず、第一次検定を受験することが可能です。
2024年の施工管理技士受験資格が改正では、この学歴や実務経験年数を定めず、以下のように定めるとされています。
- 年度末時点での年齢が19歳以上
これは、学歴や実務経験なしで1級施工管理技士試験の第一次試験を受験することが可能になることを意味しています。
つまり、学歴や実務経験だけでなく、2級施工管理技士の資格を取得している必要もないため、実務経験がまったくない人でも1級施工管理技士の第一次試験が受験可能になるということです。
また、第二次検定の受験資格も以下のようになります。
- 1級1次検定合格後、実務経験5年以上
- 2級2次検定合格後、実務経験5年以上(1級1次検定合格者に限る)
- 1級1次検定合格後、特定実務経験(※) 1年以上を含む実務経験3年以上
- 2級2次検定合格後、特定実務経験(※) 1年以上を含む実務経験3年以上(1級1次検定合格者に限る)
- 1級1次検定合格後、監理技術者補佐としての実務経験1年以上
※ここでいう特定実務経験とは、「請負金額4500万円(建築一式工事は7000万円)以上の建設工事において、監理技術者・主任技術者(当該業種の監理技術者資格者証を有する者に限る)の指導の下、または自ら主任技術者として請負工事の施工管理を行った経験(発注者側技術者の経験、建設業法の技術者配置に関する規定の適用を受けない工事の経験等は特定実務経験には該当しない)」です。
引用元:国土交通省 不動産・建設経済局 建設業課「技術検定制度改正案に関する補足資料」
2024年度の改正によって、19歳以上の人であれば誰でも1級施工管理技士の第一次検定の受験が可能となり、第一次検定合格後は、監理技術者の補佐として1年の実務経験を積むことで第二次検定が受験可能となります。
本改正により、建設業界の最大の懸念である人材不足の解決が期待されます。
実務経験なしの1級施工管理技士補は何ができるのか?
1級施工管理技士補は、実務経験がなければ取得できない資格です。そのため、現在資格を取得している1級施工管理技士補は実務経験を有しています。
しかし、2024年の受験資格改定が実施されれば、今後はまったく実務経験のない1級施工管理技士補が誕生することが考えられます。
つまり2024年以降、実務経験がある1級施工管理技士補と実務経験のない1級施工管理技士補が存在する状況が生まれるのです。
この場合、実務経験なしの1級施工管理技士補はどのような仕事ができるのでしょうか。
現在、1級施工管理技士補は発注者支援業務において関わることができる仕事が定められています。
その業務とは、監理技術者の業務の補佐です。
例えば、施行計画の作成や工程管理、品質管理、工事の指導監督などを補佐する役割です。
これは実務経験がない場合、いきなり補佐的な役割はできないのではないかという懸念点があります。
そこで、2024年以降誕生するであろう実務経験のない1級施工管理技士補については、大きな責任をともなわない、書類関連業務や検査補助などを担ってもらうようになるではないかと言われています。
また、許認可業務など無資格でも対応が可能な業務を、施工管理技士補育成のために割り当てられるのではという考えもあるようです。
いずれにせよ2024年以降、実務経験のない1級施工管理技士補が誕生することに変わりはありません。
今後、どのような仕事を任せることになるのか、最新情報を収集するようにしておきましょう。
技士補の資格は取得すべきか
ここまで見てきていただいたように、施工管理技士試験は2024年から受験資格が大きく緩和されることになります。
1級施工管理技士補の資格に関しては、ここまで解説してきた通り19歳以上から受験が可能です。
2級施工管理技士補については、17歳以上であれば誰でも取得が可能となります。
また、どちらの資格も改正が行われる以上、何らかの業務が割り当てられることが考えられます。
2級施工管理技士補については、あまり意味がないのではないかと考える方もおられるかもしれません。
資格である以上、就職や転職においては有利になるメリットが存在します。
発注者支援業務を行う上では、何らかの業務が割り当てられる可能性がありますので、1級、2級に関わらず施工管理技士補の資格は取得しておくことがおすすめです。
まとめ
建設業界の人材不足は、年を追うごとに厳しい状況にあります。特に若い人材の不足は、申告になっていると言えるでしょう。
その対策として2024年には施工管理技士の受験資格が緩和される改正が行われます。
1級施工管理技士補であれば19歳以上から、2級施工管理技士補であれば17歳以上であれば、学歴や資格を問わず資格取得のチャンスが巡ってきます。
現状として、どのような業務が割り当てられるのかは明確になっていませんが、改正を行う以上は何らかの業務を割り当てられることになるでしょう。
発注者支援業務に携わっている場合、是非とも技士補の資格は取得しておく方が、後々有利に働くと考えられます。
発注者支援業務は、国や都道府県などの自治体や、官公庁などが発注する公共事業の発注業務をサポートする仕事です。
公務員と同じような年間休日や勤務時間など職場環境も整っており、安定的な仕事であることも魅力のひとつでしょう。
興味がある方は、国民の生活を支えるインフラ整備に関われる「発注者支援業務」の仕事に携わってみませんか。