Construction column
発注者支援業務に役立つ資格はコレ!土木・建築だけじゃない資格要件もあわせて解説!技術者としてのキャリアアップにも最適です
2023.8.31
発注者支援業務に興味を持っている方の関心事は、「発注者支援業務は資格が必要か?」という点ではないでしょうか。
基本的に発注者支援業務は、資格を持っていないとできない仕事とされています。
本コラムでは、発注者支援業務に携わりたい方向けに、取得しておくと役に立つ資格を解説します。
解説する資格は発注者支援業務だけでなく、技術者としてキャリアアップを目指す方にとっても有用ですので、参考にしてみてください。
目次
発注者支援業務に役立つ資格/土木編
まずは、発注者支援業務の中でも大きな割合を占める土木関連の資格について解説します。
発注者支援業務においては、建設関係者であればよく知っている「施工管理技士」だけでなく、さまざまな資格が役に立ちます。
技術士/技術士補(総合技術監理部門)
技術者にとって、国家資格の中でも最高峰の資格として知られているのが技術士です。技術士試験に合格すると、技術の高等応用能力や高い技術者倫理、豊富な実務経験があることが認定されます。
21部門から1部門を選択して試験を受けることになりますが、発注者支援業務の場合に求められるのは総合技術管理部門です。
技術士試験には一次試験と二次試験に分かれており、一次試験に合格し登録することで得られるのが技術士補です。技術士補は、あくまでも技術士の前段階と考えられています。技術士補として技術士のもとで経験を積み、技術士を目指しましょう。
土木施工管理技士(1級/2級)
土木・建設業界において最も有名な資格が「土木施工管理技士」でしょう。発注者支援業務でも必須と言っても過言ではない資格です。
工事現場において、主任技術者や監理技術者になるためにも必須の資格とされているため、土木・建築業界で働いている方の多くが取得を目指している資格でもあります。
発注者支援業務においても、工事監督支援業務で施工管理を行うことがあるため、取得しておくことをおすすめします。
土木施工管理技士には1級と2級があります。技術士試験同様、土木施工管理技士試験も一次試験、二次試験が用意されています。一次試験に合格すれば、1級土木管理技士補、2級管理技士補となることが可能です。
土木学会認定土木技術者(特別上級/上級/1級/2級)
本資格については、あまり馴染みがないかもしれません。本資格は、土木学会が独自に実施している、実務に携わる土木技術者の実務能力を評価する制度です。
土木学会が認定している土木技術者は4つの階層に分かれており、それぞれ「特別上級」「上級」「1級」「2級」です。
土木学会認定土木技術者の資格には、受験資格が以下の通りに設定されています。
特別上級土木技術者:実務経験17年以上(大学院在籍期間も実務経験と見なす)
上級土木技術者資格
上級土木技術者 :実務経験年数が12年以上 (大学院在籍期間も実務経験と見なす)
責任ある立場で5年以上の経験年数を有している
1級土木技術者 :実務経験年数が7年以上 (大学院在籍期間も実務経験と見なす)
責任ある立場で3年以上の経験年数を有している
2級土木技術者 :土木技術検定試験で所定の点数を獲得する
土木学会認定土木技術者も発注者支援業務において、管理技術者になる要件と定められています。
公共工事品質確保技術者(I/II)
本資格についても、土木学会認定土木技術者と同様、あまり聞き慣れていないかもしれません。本資格は、一般社団法人公共建築協会が運用している資格です。
内容としては、品確法第7条及び第21条に基づいた発注関係事務を適切に実施することができる人材の育成を目的としています。
公共工事品質確保技術者は、(I)、(II)ともに発注関連事務及び発注者支援業務の管理を行うことができ、(I)は総合評価の審査及び総合評価の導入・制度検討のアドバイス等を行うことができます。
RCCM(シビルコンサルティングマネージャー)
RCCMは、一般社団法人建設コンサルタンツ協会が主催している資格で、22種類の専門技術部門に分かれています。本資格の目的は、建設コンサルタント業務などを管理する技術者の育成、技術力の客観的評価です。
背景には、高度で良質な社会インフラを整備・維持するために、建設コンサルタント業務における技術水準の確保および優秀な責任技術者の確保が求められていることがあります。
本資格を取得することで、国土交通省が規定する管理技術者や照査技術者、業務担当者になることが可能になります。
RCCMを取得することは、管理技術者や照査技術者として、業務上必要な技術や知識を有していることになるので信頼を得ることが可能です。
これらの資格は土木施工管理技士を除き、どちらかといえば民間工事より公共工事で活かすことができます。そのため、発注者支援業務に携わりたいと考えている方は取得を考えてみてください。
発注者支援業務に役立つ資格/土木以外編
上記では発注者支援業務に役立つ、土木の資格について解説しました。しかし、発注者支援業務の分野は土木に限られているわけではありません。
そこで、ここからは発注者支援業務における土木分野以外の資格について解説します。
発注者支援業務の土木以外の分野としては、「電気」、「機械」、「営繕」、「造園」、「管」があります。
電気
電気通信設備工事が相当程度含まれると判断される工事の場合、土木以外にも電気に関する資格が必要とされています。
主な電気に関する資格は、以下の通りです。
技術士/技術士補(総合技術監理部門)
電気工事施工管理技士(1級/2級)
電気通信工事施工管理技士(1級/2級)
電気工事士(第一種/第二種)
電気主任技術者(第一種/第二種/第三種)
電気通信主任技術者(伝送交換主任技術者または線路主任技術者)
技術士、技術士補の資格に関しては、土木同様に総合技術管理部門の資格が必要になります。
電気工事士の仕事は、建設業の中で送電線、配電盤、電灯、電力機器などの設備の工事を行う際に必要となる資格です。電気主任技術者は、建設業の中で送電線、配電盤、電灯、電力機器などの設備の工事を行うための資格になります。
電気通信工事施工管理技士は、30年振りに新設された施工管理技士の一種で、資格を取得すると、インターネット回線や固定電話、携帯電話などの電気通信系設備の工事現場における施工管理者となることが可能です。
機械
機械設備工事が相当程度含まれると判断される工事の場合、機械設備工事(例:プラント設備や立体駐車設備など)に関する資格が必要となります。
機械設備工事に必要となる資格は以下の2つです。
技術士/技術士補(総合技術監理部門)
建設機械施工管理技士(1級/2級)
機械設備工事の場合にも技術士、技術士補の資格を取得する必要があります。
建設機械施工管理技士は、建設現場において各種建設機械を使って施工する際の管理者となる際に必要です。
営繕
営繕とは、建築物を営造(建物をつくること)と修繕を行うことを指します。営繕工事を行う際には、営繕に関する資格が必要です。
営繕工事は、土木とは違い建築物をつくり維持管理を行うため、建築系の資格を取得しなくてはいけません。
建築士(1級/2級)
建築施工管理技士(1級/2級)
建築士は、建物の設計・工事監理を行うために必要な資格です。建築のプロフェッショナルであることを証明する資格と言っても過言ではありません。
建築施工管理技士は、建築工事の施工計画や現場での施工管理など、現場を指導・監督するための資格です。
造園
造園工事が相当程度含まれると判断される場合には、造園に関する資格が必要になります。例えば国営公園における造園工事などです。
造園工事に関する資格としては、以下のものがあります。
造園施工管理技士(1級/2級)
1級、2級ともに一次試験、二次試験が実施されており、1級の第一次検定の受験資格は、学歴に応じ指定されている実務経験年数を満たしている人や専任の主任技術者の実務経験が1年以上ある人などの実務経験が必要です。
2級の一次試験受験資格は、試験実施年度において満17歳以上となっています。
管
管工事が相当程度含まれると判断される場合には、管工事に関する資格が必要です。管工事の具体例としては、空調設備や冷暖房設備、給排水設備、管を通して水・ガス・水蒸気を送る設備などを設置するための工事のことをいいます。
管工事に関する資格としては、以下のものがあります。
管工事施工管理技士(1級/2級)
受験資格等に関しては、上述の造園施工管理技士等と同様です。
以上のように、発注者支援業務に従事する際には、土木以外の資格が必要となる場合があります。発注者支援業務を行う会社に就職する際は、どのような業務を行っているかを確認するようにしてください。
発注者支援業務は資格要件の緩和で無資格でも始められます
発注者支援業務は、基本的に資格が必要な仕事です。しかし、近年、人材不足への対策として各官公庁の中でも資格要件を緩和するケースが増加しています。
1つの事務所や管理事務所などにおいて、担当技術者が複数人いる場合には1名に限って無資格でも構わないという官公庁が増えています。
また、資格要件の規制緩和により無資格者でも発注者支援業務に関わる機会が増えたことにより、求人にも「無資格でも応募可能」という募集が増えてきているのが現状です。
発注者支援業務は、厳しい残業もなく、休日も週休2日が採用されており、働きやすい職場環境が整えられています。
発注支援業務は、国民生活の基盤を支える社会インフラの整備に携われる仕事です。無資格でも携われるようになりましたが、資格を取得することで今後、キャリアアップや転職の際に役立つことがあるでしょう。
資格を取得することで、国民を支える基盤整備の深い部分に携われるようになるため、より大きなやりがいを感じることができるようになります。
発注者支援事業に従事したいと考えている方は、ぜひ資格取得も視野に入れておくようにしてください。