Construction column
建設業の働き方改革|2024年問題とは何かを解説します。
2023.11.17
建設業界では働き方改革が進んでおり、2024年の4月から時間外労働に上限が設定されます。
そのため決められた残業時間内に、業務が終わるように働き方の仕組みを作ることが求められているんです。
この記事では、建設業の働き方改革の現状や課題について解説していきます。
最後まで読んで、ご自身の働き方の参考にしてくださいね。
目次
建設業の2024年問題とは
それでは、建設業の2024年問題について触れていきましょう。
2019年に施行された「働き方改革関連法」が、さまざまな業種で適用されましたが、建設業では5年間猶予されていました。
「働き方改革関連法」とは、企業が働き方改革を進めるように政府が制定した法律です。
そして、その「働き方改革関連法」が2024年4月に適用されるため、建設業界が対応を迫られています。
この働く環境を取り巻く問題を、建設業の2024年問題と言います。
建設業の働き方改革のポイント
建設業の働き方改革のポイントは、時間外労働に上限規制が設けられ、それを破ると罰則が課せられる点です。
詳しく見ていきましょう。
時間外労働の上限規制
2024年の4月から、時間外労働(休日労働は除く)の上限は月45時間・年360時間となり、特別な事情がない限りこの上限時間を守らなければなりません。
また特別な事情があって、「特別条項付き36協定」を結んだ場合でも、1ヶ月で100時間未満、2ヶ月以上の月平均が80時間以内、最終的には1年間で720時間以内に残業を抑える必要があります。
建設業の労働時間や賃金については、こちらの記事で詳しく解説しています。↓
建設業の労働時間や賃金を全産業と比較。統計データをもとに解説します
割増賃金アップ
2023年の労働基準法の改正から、中小企業において法定時間外労働時間が60時間を超えた場合、割増賃金率が25%から50%に引き上げられることとなりました。
ただし従業員の同意があれば、割増賃金支払いの代わりに時間外労働分の休暇を与えることでの対応も可能です。
建設業の今と課題
国土交通省は、建設業が現在抱えている問題は「少子高齢化による人材不足」と「長時間労働」の2つだと発表しています。
少子高齢化からくる人手不足
国土交通省の発表した「建設業の働き方改革の現状と課題」によると、建設業就業者の55歳以上が約36%、29歳以下が約12%と高齢化が進行しており、次世代への技術継承が大きな課題となっているのです。
また29歳以下の建設業就業者数が1割以下にとどまっており、これは離職者数が多いことが就業者の少なさに影響していると考えられます。
離職する主な理由として「休みが取りづらい」や「労働に対して賃金が低い」といったことが挙げられます。
当たり前のようになっている長時間残業
工期が短ければ、そのぶん短期間で仕事を終わらせる必要があるため、必然的に長時間労働を強いられているのです。
また不況の影響もあり、工事を選べなくなっているため、工期の短い工事も積極的に請け負わなければならないことも長時間労働の一因となっています。
他にも、ベテランの職人は「休日返上で仕事をして当たり前」という考え方をする人もおり、そういった業界の慣習が長時間労働に繋がっています。
膨大な量の紙資料
建設業界では、図面や見積書などの資料は紙でやり取りをされており、今でもその風潮は色濃く残っています。
そのためデータの変更があった場合などに、遡及処理することが難しく、情報の混乱を招くことも考えられます。
よって可能なところはITを用いてデータを管理するようにし、情報を一元化することがこれからの課題となります。
残業時間を減らすために必要なこと
では、建設業界で残業時間を減らすために見直した方が良い点は、どういったところなのでしょうか。
建設業においては、労働時間の上限規制が設けられる前に「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」の内容に取り組み、業務の改善を目指す必要があります。
受注者・発注者はガイドラインをもとに、取り組み内容の理解と、それを踏まえて共に協力する体制を作らなければなりません。
建設業に求められる、時間外労働の上限規制の適用に向けた取り組みは以下の通りです。
以下で解説していきます。
工事スケジュールの見直し
ガイドラインでは、工期を適切に設定し、施工時期を平準化するように定めています。
工期を考える際は、建設業労働者の休日(週休2日など)や労務・資機材の調達や現場の後処理時間、雨の日や降雪・出水期等の作業ができない日数などを踏まえなければなりません。
また公共工事に関しては、週休2日工事の件数を増やすように求められます。
必要経費へのしわ寄せ防止
ガイドラインには、工事の下請け会社は「法定福利費」などの支出を項目として明示し、必要資料に記載し、適正な請負金額で工事契約を締結するように求めています。
生産性の向上
時間外労働の上限規制に当たって、生産性向上が必要になるため、ガイドラインでは建設生産プロセス全体において効率を重視して生産性を高めるように定めています。
詳しくは、調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新のそれぞれの工程における受発注者の連携等を通じて、以下の内容に取り組む必要があるとしています。
・ドローンによる3次元測量やICT 建機の活用等、ICT 活用工事の推進
・3次元モデルにより、設計から施工、維持管理に至るまでの建設ライフサイクル全体で情報を蓄積し活用するBIM/CIM の積極的な活用
・設計等プロジェクトの初期段階において、受発注者間で施工等に関する検討を集中的に行い、生産性向上の取組を強化することができるよう、フロントローディング(ECI 方式の活用等)の積極的な活用
・業務の効率化に向けた工事関係書類の削減・簡素化、情報共有システムを活用した書類授受の省力化
・プレキャスト製品など効率化が図られる工法の活用や汎用性の高い工法の導入
・公共工事における新技術活用システム
・施工時期等の平準化
引用:「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン
発注者支援の活用
今までの工期設定を見直して、外部機関を活用しようという方針です。
ガイドラインにも「工事の特性等を踏まえ、外部機関(コンストラクション・マネジメント企業等)を活用」するよう記載されています。
工事の発注者を補助する機関を活用することで、今まで受注会社が請け負っていた業務の負担を減らすことができ、働きやすい環境を作ることが見込めます。
まとめ
本記事では、建設業の働き方改革について、2024年問題に触れながら紹介しました。
建設業界では働き方改革が進んでいる中、いまだに長時間労働などは慣習として残っています。
しかしながら建設業界でも、「発注者支援業務」であれば、残業時間やワークライフバランスに悩むことない働き方はできます。
発注者支援業務は、国土交通省や地方自治体などの公共機関が発注した工事について、彼らの補助者として行う業務です。
業務内容や待遇を、公務員を基本として設定されているため、「みなし公務員」と呼ばれ、休みが取りやすく給料も安定しており人気の職種です。
発注者支援業務に興味のある人は、こちらの記事を参考にしてください↓