Construction column
主任技術者に専任性が求められる工事の要件とは?条件や要件緩和も解説
2024.5.30
主任技術者は原則として、ほぼ全ての工事において専任での配置が求められています。
しかし、人材不足の折、1つの工事ごとに専任の主任技術者を置くのは難しいとお悩みの事業主の方も多いのではないでしょうか。
実は条件によっては非専任(兼任)や配置なしでの施工が認められるケースもあります。
この記事を読めば、主任技術者の基礎知識や配置に関する緩和要件が分かります。
主任技術者の配置についてお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
この記事のポイント
- 主任技術者の条件や配置の規定
- 主任技術者と混同されやすい職務
- 主任技術者配置の規制緩和
目次
主任技術者とは
主任技術者は建設工事の施工において技術上の管理を行う技術者です。
工事の実質的な責任者として、以下の業務を担います。
1.施工計画の策定と実行
2.工事の工程管理
3.工事の品質管理
4.工事の安全管理
主任技術者の条件
主任技術者になるためには、以下3つのいずれかの条件を満たす必要があります。
1.業種に関わる国家資格を取得していること
必要な資格は業種によって異なります。
例えば、土木一式工事の主任技術者になるためには、以下の資格のいずれかを取得することが求められます。
・建設機械施工管理技士1級または2級(第1種~第6種)
・土木施工管理技士1級または2級(種別:土木)
2.学歴に応じた実務経験がある
一定以上の実務経験を積むことで主任技術者になれます。
必要な実務経験年数は学歴によって異なり、以下のようになります。
学歴 | 実務経験年数(卒業後より換算) |
・高等専門学校(指定学科) ・専門学校(専門士または高度専門士・指定学科) ・短期大学(指定学科) ・大学の指定学科 | 3年以上 |
・高等学校(指定学科) ・専門学校(専門士または高度専門士以外・指定学科) | 5年以上 |
・指定学科以外 | 10年以上 |
出典:国土交通省
3.一定の実務経験を積んだのち、登録基幹技能者の講習を受講
該当する業種において10年間以上(うち職長経験3年以上)の実務経験を積んだのち、業種に応じた講習を受講することで、主任技術者の要件を満たせます。
主任技術者になる条件については以下の記事でも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
主任技術者になるための要件3つ!監理技術者との違いや資格についても解説
主任技術者を専任で配置する期間
主任技術者は原則として、契約工期内は専任での配置が義務付けられています。
しかし、期間内であっても、明らかに現場が不可動である場合は、他の施工現場と兼任しても構わないとされています。
専任不要になるのは以下のケースです。
1.登録基幹技能者の講習を受講請負契約締結後、現場施工に着手するまでの期間
2.自然災害の発生や埋蔵文化財調査などにより、工事を全面的に一時中止している期間
3.工事完成後検査が終了し、事務手続、後片付けなどのみが残っている期間
4.付帯設備を工場で製作しており、現場が稼動していない期間
5.下請工事においては、下請工事が実際に施工されている期間
専任・非専任の違い
専任と聞くと、「施工中は工事現場に常駐する」という意味ではありません。国土交通省が策定した監理技術者専用マニュアルでは、専任を以下のように定義しています。
他の工事現場に係る職務を兼務せず、常時継続的に当該工事現場にのみ従事していること |
主任技術者が技術研鑽のための研修・講習・試験への参加や休暇の取得などで、短期間不在になるのは問題ありません。
ただし、現場を離れる際には適切な施工ができる体制を確保し、発注者や元請、上位の下請けなどの了解を得る必要があります。
主任技術者と混同されやすい職務
主任技術者と混同されやすい職務に、「監理技術者」、「専任技術者」、「専門技術者」があります。
それぞれの職務について、主任技術者との違いを解説します。
監理技術者
監理技術者は、下請金額が4,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)を超える大規模な工事を行う際、主任技術者に代わり配置が義務付けられている技術者です。
主任技術者と同じく工事現場の監理を行いますが、加えて下請け業者への指導監督も業務に含まれます。
専任技術者
専任技術者は、営業所に常勤する技術者で、契約の締結や履行が適切になされるよう技術面から支援を行います。
営業所に常駐する必要があるため、原則として主任技術者との兼任はできません。
しかし、上記のような規定があると、技術者が一人しかいない小規模な施工会社は工事を請け負えなくなります。
対策として、要件を満たせば兼任できるという緩和措置が設けられています。
専門技術者
専門技術者は、主任技術者と同じく現場に配置される技術者です。
原則として、一式工事の中の専門工事が500万円以上の大規模な施工である場合、業種ごとに専門技術者の配置が義務付けられています。
一式工事の主任技術者が専門工事の主任技術者資格を持っている場合は、専門技術者を兼任できます。
主任技術者配置の要件緩和
主任技術者は工事ごとに必要になるうえ、専任技術者との兼任ができません。
小規模な施工会社では技術者配置の規定を満たせず、工事が受注できないことも起こりえます。
対策として一定の要件を満たすと、主任技術者を専任で置かなくても良いという規制緩和が設けられています。
緩和の要件と内容は以下の通りです。
非専任可となる要件
主任技術者は工事現場ごとに配置されるのが原則であり、他の現場と兼任できません。しかし、以下の要件を満たせば、2ヶ所以上の現場を同じ主任技術者が監理できます。
・同一の建設業者が施工する
・工事現場の相互の間隔が10km程度以内
・工事同士に密接な関係があること
例:構造部材を一括で調達している
相当の部分の工事を同一の下請け業者で施工し、相互に工程調整を要する
ただし、各工事が適正に施工され、安全や品質が確保できるよう発注者が適切に判断する必要があります。
配置不要となる要件
2020年10月から施工された改正建設業法においては、下請業者が工事を請け負うに当たり以下の要件を満たせば主任技術者の配置が不要になります。
要件 | 備考 |
特定専門工事に該当する | 特定専門工事の定義 ・下請代金の合計額が3,500万円未満の鉄筋工事及び型枠工事 ・元請が発注者から直接請け負った場合は、下請契約の請負額が4,000万円未満 |
書面で合意がなされている | 注文者と元請及び、元請と上位下請の間で、書面による合意が取れている |
元請または上位下請の主任技術者が一定の要件を満たしている | 条件の詳細 ・元請または上位下請の主任技術者が、 |
更なる下請契約を行わない下請業者である | 主任技術者を置かずに再下請契約をすると監督処分の対象となる |
主任技術者設置不要となる要件に関しては、以下の記事でも解説しているので併せて参考にしてみてください。
下請会社は主任技術者を設置しなくても良い?特定専門工事について徹底解説!
専任技術者と兼任可となる要件
以下の条件を満たすと、主任技術者と専任技術者を兼任できます。
1.非専任可の工事であること
2.その専任技術者が常勤している営業所で締結された請負工事であること
3.主任技術者と専任技術者双方の職務を適正に遂行できるほど、工事現場と営業所が近接していること
4.営業所と常時連絡を取り合える体制であること
主任技術者配置のさらなる規制緩和が検討されている
建設工事を請け負う際には、各工事現場に主任技術者もしくは監理技術者の配置が義務付けられています。
さらに営業所に専任技術者を常駐させる必要があるため、技術者の少ない施工会社では条件を満たすのが困難です。
昨今、建設業界は慢性的な後継者不足に陥っています。
このままでは「工事をしなければならないのに、施工できる会社がない」という事態にもなりかねません。
そうした現状に鑑み、建設業界では人手不足を解決するための対策が行われています。
ICTを駆使して遠隔から施工管理をすることで、主任技術者が現場に常駐しなくても安全・円滑に工事を進められる仕組み作りが進められています。
技術者配置のさらなる規制緩和も対策の一つです。
具体的には専任不要限度額の引き上げ、専任現場における主任技術者と専任技術者の兼任などが検討されています。
人手不足と技術向上を背景に、建設業界でも働き方改革が推進されています。
今後の動きに注目していきましょう。
まとめ
主任技術者の専任の条件と、緩和要件について解説しました。
主任技術者は建設工事を安全・円滑に進めるためになくてはならない存在です。
現在、建設業界では人材不足に対応するための技術や体制を整備することが求められています。
併せて規制緩和も進められ、主任技術者が専任技術者を兼任する、複数の工事現場を監理するなど、より責任の重い職務を負うことも増えていくでしょう。
主任技術者になれるほどの経験や知識を有している技術者は、建設業を支える人材として、今後ますます重要視されると考えられます。
主任技術者レベルの能力がある技術者は、発注者支援業務への転職も視野に入れることが可能です。
発注者支援業務は、公共事業を発注する公務員に代わり、工事の発注や計画、現場の監理を行います。
大規模な公共事業に携わることができる、責任重大ながらそれだけやりがいのある仕事です。
当社MACでは、発注者支援業務の紹介を行っております。
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