Construction column
発注者支援業務とCM方式の関係とは?発注者支援型CM方式を詳しく解説!
2023.1.27
発注者支援型CM方式は、発注者支援業務と同じものではありません。
「発注者支援業務と発注者支援型CM方式の2つの違いがよく分からない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、発注者支援業務と発注者支援型CM方式についての関係を詳しく解説していきます。
発注者支援型CM方式のメリットとデメリットについてもあわせてご覧ください。
目次
CM方式とは?
「そもそもCM方式とはどのようなもの?」と疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
ここからは、CM方式について詳しく解説していきます。
CM方式について知識を深めていきましょう。
CM方式の概要
CMとは「コンストラクション・マネジメント」のことで、CMR(コンストラクションマネージャー)が発注者をサポートしながら業務を行うことを指します。
CMRが行う業務は次のようなものがあります。
・発注者に対して適切な発注方式を提案する
・設計者に対して設計内容の確認を行なったり、工期短縮・コスト削減に関する助言をしたりする
・施工者に対して工事進捗状況の確認を行い、工事の追加や変更がある場合は管理を行う
つまり、建設に関する専門知識を有するCMRは、発注者の立場に立って設計・発注・施工において工事の発注方式を検討するのです。
また、工程・品質・コストの管理を行うことも重要な業務といえます。
ただし、CMRが行うマネジメント業務については、すべてを行う場合と一部を行う場合があります。
発注者自身が専門知識を持っていなかったり工事の経験がなかったりすると、設計会社や建設会社などと対等な立場で業務を進めるのが難しいです。
しかし、CM方式を導入することで専門知識を持ち対等な立場で業務を進められるようになります。
また、CMRは基本計画の段階から関わるため、精度の高い予算を算出できるようになるのです。
設計会社や施工会社の選定・基本設計・実施設計・完成までにかかるコストの削減と予算超過を防止できるようになります。
結果的に、建設事業の透明性や説明責任が確保できるようになったり、発注者の利益を守ることにもつながったりするのです。
なお、CM方式には「ピュア型CM方式」「アットリスク型CM方式」の2種類があげられます。
「ピュア型CM方式」は、CMRが設計・発注・施工の各段階でマネジメント業務を行うものです。
「アットリスク型CM方式」は、CMRが設計・発注・施工の各段階でマネジメント業務を行うのに加えて、CMRが施工に関してリスクを負うといった特徴があります。
代表的な発注方式
発注者に対して適切な発注方式を提案することは、CM方式においてCMRが行う重要な業務の1つです。
それでは、発注方式とは具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
代表的な発注方式としてあげられるのは「設計施工分離方式」「ECI方式」「DB方式(デザインビルド方式)」の3つです。
それぞれについて解説していきます。
「設計施工分離方式」とは、設計と施工を別の会社に発注するものです。
導入事例が多く、設計会社と施工会社を幅広く検討できるといった特徴があります。
設計会社からの設計図面をもとに施工会社に工事を発注できることから、価格競争によって施工会社を選定できるようになります。
「ECI方式」とは、設計と施工を別の会社に発注するものですが、施工会社が設計段階から技術協力に参加できるのが特徴です。
施工会社の最新技術を取り入れた設計ができたり、施工段階での設計変更リスクを低減できたりすることも期待できます。
ECI方式において、施工会社は発注者と設計会社に対して技術提案を行う必要があります。
「DB方式(デザインビルド方式)」とは、設計と施工を一括して1つの会社に発注するものです。
基本設計・実施設計・施工までを施工会社が行うため、責任を一元化できるのも特徴です。
工期と工事費を早く確定できることやコストの削減、工期の短縮などが期待できます。
CM方式の導入事例
CM方式の活用状況をみてみると、東日本大震災発生前では「加古川JCT」「東海環状」「森吉山ダム」などでCM方式を導入しています。
東日本大震災発生後では「三陸沿岸」「熊本震災」など災害復旧や復興が多いのも特徴です。
一般社団法人 建設コンサルタンツ協会|CM方式の活用を支援するCM方式活用の手引き(案)【改訂版】2019(平成31)年2月
発注者支援型CM方式とは?
ここからは、発注者支援型CM方式について詳しく解説していきます。
大規模な建設プロジェクトを進める発注機関の場合、発注者が担当する業務の多様化や職員の不足などが原因で、円滑に業務を進めるのが難しいです。
災害が発生した場合など一時的に工事量が増加する場合は、複数の工事が同時進行で集中することから、関係機関への頻繁な調整が必要になってしまいます。
そのため、発注機関の体制を整えられない場合は、必要に応じて発注者支援型CM方式を活用するのです。
発注機関の職員の補助を行ったり、意思決定や判断などの支援をしたりします。
高い専門技術を持つCMRと業務を行うことで、発注者の技術力向上も期待できます。
ただし、発注機関が最終的な責任を持つため、意思決定や判断は発注者が担わなければなりません。
国土交通省直轄事業における発注者支援型CM方式の取組み 事例集(案)平成21年3月
発注者支援業務と発注者支援型CM方式
発注機関の監督業務を補完するための方法として、発注者支援業務と発注者支援型CMの2つがあります。
ただ、発注者支援業務と発注者支援型CM方式のどちらを活用するかは、適切に使い分けることが重要です。
ここからは、発注者支援業務と発注者支援型CM方式について解説していきます。
発注者支援業務は、発注機関の職員の指示のもと発注者の立場で補助業務を行います。
一方、発注者支援型CM方式は、発注機関との契約の範囲内で事業者の立場でマネジメント業務を行います。
さらに詳しく解説すると、個別工事の監督業について人員の補完を行う場合は発注者支援業務、複数工事の最適化を行う場合は発注者支援型CM方式を活用するのが重要です。
発注者支援業務の場合は、工事の特性によって限定されません。
また、工事着手時に導入され、現場常駐はないといわれています。
発注者支援型CM方式の場合は、複数工事が一時的に工事量が増加する場合などで調整が必要な場合に活用されます。
災害復旧工事やダムの建設工事など民間企業の高い技術力を活用する工事でも活用されているのです。
工事着工前や工事着工時に導入され、管理技術者が常駐する必要があります。
国土交通省直轄事業における発注者支援型CM方式の取組み 事例集(案)平成21年3月
発注者支援型CM方式のメリットとデメリット
発注者支援型CM方式のメリットとデメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
ここからは、発注者支援型CM方式のメリットとデメリットについて解説していきます。
まず、発注者支援型CM方式のメリットは、発注者側はCMRによって適切な提案や資料作成などを担当してもらえることです。
また、CMRの高い技術力に触れられるため、発注機関の技術力向上が期待できることもあげられます。
逆に、発注者支援型CM方式のデメリットは、CMRの提案に誤りがある場合の責任は発注機関の職員が負うことになることです。
また、発注者と受注者の間にCMRがいるため、意思決定や判断に時間がかかることもあります。
国土交通省直轄事業における発注者支援型CM方式の取組み 事例集(案)平成21年3月
まとめ
今回の記事では、発注者支援業務と発注者支援型CM方式について解説しました。
発注者支援業務と発注者支援型CM方式はどちらも似ている言葉ですが、異なる立場で業務を行なっているのです。
建設事業によって、発注者支援業務と発注者型CM方式のどちらを活用すべきかも異なります。
今後のキャリアを考える上でも、ご自身がどのような業務を行いたいのかを明確にしておくことが重要です。