国土交通省の遠隔臨場とは?発注者目線のメリットとデメリットを解説します!
これまでは現場へ行って確認や立会を行うのが一般的でしたが、いち早く遠隔臨場を進めてきた国土交通省。
「そもそも遠隔臨場とはどんなもの?」「国土交通省は遠隔臨場についてどのようなことを定めているの?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで今回の記事では、国土交通省が進めてきた遠隔臨場について詳しく解説します。
発注者目線のメリットとデメリットについてもあわせてご覧ください。
目次
遠隔臨場とは
遠隔臨場とは、直接現場に行くことなく施工状況や検査確認をするというものです。
現場代理人や工事担当者などの受注者が動画撮影用カメラを使用し、その映像を映すことでモニターの向こうの発注者の職員が臨場を行います。
遠隔臨場で用いるツールとしてあげられるのは「動画撮影用カメラ」と「Web会議システム」の2つです。
それぞれについてみていきましょう。
動画撮影用カメラ
遠隔臨場の際は動画撮影用にカメラが必要になりますが、多くの現場ではウェアラブルカメラが使われています。
ウェアラブルカメラとは小さなカメラのことで、映像と音声を取得できるものです。
受注者の職員がヘルメットに装着して使用できるため、両手がふさがらない状態で使用できるのが特徴です。
また、カメラとネットワーク機器をつなぐネットワークカメラを使うこともあります。
ウェアラブルカメラとの違いは、固定して使用するという点です。
ほかにも、スマートフォンやタブレット、クラウドカメラを使って確認や立会の状況を撮影することもあります。
Web会議システム
Web会議システムは、受注者の職員から送られてくる映像と音声を共有するために必要となるツールです。
オンライン会議で使用しているWeb会議システムを使用することで、遠隔臨場ができるようになります。
現場の様子をリアルタイムで確認でき、大型のモニターを接続することで複数の監督職員で確認できるようになるのです。
国土交通省の遠隔臨場について
ここからは、国土交通省で実施している遠隔臨場について詳しくみていきましょう。
遠隔臨場の実施に向けた取り組み
国土交通省では令和2年度から遠隔臨場の試行を進め、令和4年度から本格的に遠隔臨場を実施しています。
たとえば、国土交通省関東地方整備局の工事で、遠隔臨場の試行工事としてあげられるのは次のとおりです。
・R1荒川下流右岸浮間地区下流低水護岸災害復旧工事(東京都北区)
・R1荒川下流右岸赤羽北地区低水護岸災害復旧工事(東京都北区)
・建設業協会と連携した「建設現場の遠隔臨場勉強会」
遠隔臨場の試行の結果、令和2年度には760件、令和3年度には約1800件程度普及しました。
これまでの直轄土木工事では、監督職員が直接現場へ向かって段階確認や材料確認、立会などを実施していました。
しかし、段階確認・材料確認・立会においては遠隔臨場を実施され、中間技術検査のリモート化についても検討を進めています。
ここで、段階確認・材料確認・立会・中間技術検査について整理してみましょう。
・段階確認:設計図書で定められた施工段階で、監督職員が臨場等によって「出来形」「品質」「規格」「数値」などを確認すること
・材料確認:共通仕様書や特記仕様書などの設計図書で指定された材料の確認を行うもの
・立会:契約図書で定められた項目において、監督職員は臨場で契約図書との適合を確認するもの
・中間技術検査:設計図書で定められた段階で行う検査のこと
遠隔臨場を進める目的
なぜ、国土交通省は遠隔臨場を進めてきたのでしょうか。
実は、遠隔臨場を実施する目的には、次のようなものがあります。
・段階確認や材料確認、立会を効率よく進める
・確認書類を簡素化する
遠隔臨場ができることで、立会に要する移動時間や待ち時間がなくなります。
そのため、これまで移動や待機に費やしていた時間を書類作成業務に使えるようになるのです。
遠隔臨場は、効率よく業務を進めるために進められてきたのです。
遠隔臨場が対象となる工事
国土交通省発注の次の工事は、原則すべての工事で遠隔臨場を適用すると定められているのです。
・令和4年4月1日以降に発注された工事
・令和4年4月1日の時点で遠隔臨場の対象工種がある工事
ただし、通信環境が整っていない現場の場合は遠隔臨場を適用しなくてもいいとされています。
ほかにも、遠隔臨場だけでは不十分と判断される工種の場合も適用しなくていいことになっています。
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遠隔臨場のメリット・デメリット
ここからは、遠隔臨場を実施するメリット・デメリットについてみていきましょう。
メリット
遠隔臨場を実施するメリットは3つあります。
1つ目は、移動時間や待ち時間がなくなることです。
現場によっては移動や待ち時間に時間を費やしてしまうことで、業務を効率よく進められないといったこともあります。
しかし、遠隔臨場を実施すると立会のために移動する必要がなくなるため、立会までの時間を使って他の書類作成業務などを進められます。
また、待ち時間を使って別の業務を進めることも可能です。
令和4年度建設現場の遠隔臨場に関するアンケート調査結果によると、遠隔臨場を活用することで時間削減効果があったと回答したのは全体の92%。
いくつもの現場の立会がある場合でも、遠隔臨場を行うことで効率よく業務を進められるといえます。
2つ目は、安全に作業できる環境を整えられることです。
遠隔臨場を実施することで現場の状況を把握しやすくなるため、作業環境に問題がある場合はすぐに指摘できます。
そのため、安全な作業環境を維持できるようになるのです。
また、大雨や地震などが発生した場合も受注者の職員と現場状況を共有できる点で、現場の変化を把握しやすくなります。
3つ目は、確認や立会の様子を保存できることです。
現場臨場で確認や立会を行うと「もう一度確認したい」という場合があるものですが、遠隔臨場なら映像と音声を保存できます。
また、実際に工事を担当していない職員が現場の様子や立会のポイントなどを学ぶツールにもなるのです。
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デメリット
遠隔臨場を実施するデメリットは3つあります。
1つ目は、自分の目で詳細をチェックできないことです。
構造物の細部まで確認したい場合でも、直接自分の目でみるのではなく映像でしか確認ができません。
そのため、構造物の詳細を確認したい場合は不便に感じてしまうこともあるのです。
また、映像が不鮮明であれば正確に確認できないこと場合もあります。
2つ目は、デジタル化に慣れていないと苦労することです。
遠隔臨場で使用する書類のほとんどは、紙ではなくデジタル化されたものです。
そのため、紙の資料に慣れている方は、デジタル化された工事書類を確認するのに苦労することもあります。
建設業界全体でみてもペーパーレス化が進んでいるため、紙ではなくデジタルデータに慣れることで業務の効率化に繋がるのではないでしょうか。
3つ目は、通信環境が整っていない場所では接続が切れてしまうことです。
遠隔臨場は通信環境が整っていないと円滑に映像や音声を届けられません。
トンネルやダム、その他の山間部の現場では、映像が乱れたり音声が途切れたりすることがあるのです。
遠隔臨場を実施しても問題がないか、事前に確認しておく必要があります。
まとめ
今回の記事では、国土交通省における遠隔臨場について解説しました。
数多くある発注機関の中でも、いち早く遠隔臨場の実施を進めているのが国土交通省です。
そんな国土交通省の職員を補助する発注者支援業務。
実は、発注者支援業務も同様に遠隔臨場によって確認や立会を行えるのです。
遠隔臨場によって仕事の効率化を実現でき、さらに働きやすさを感じられるでしょう。
「業務を効率よく進めたい」「遠隔臨場に興味がある」という方は、国土交通省の工事に関わり、発注者の立場で仕事ができる発注者支援業務はおすすめです。