Construction column
建設業に若手がいない・増えない理由とは?高齢化と慢性的な人手不足を解決する方法
2024.1.26
現在、建設業界では、職人の高齢化と慢性的な人手不足が深刻化しています。
建設業に若手がいない・増えない原因は、建設業のイメージや最近の若者の働き方への意識をはじめ、さまざま考えられます。
この記事では、建設業界の若返りと人不足解消を目的に、建設業に若手がいない理由や、定着してもらえる環境づくりの方法を紹介します。
目次
建設業界で働く人材の現状
建設業が現在進行形で抱えている「人材に関する課題」は、複数挙げられます。
・職人の高齢化が非常に進んでいる
・建設業を志望する若手が少ない
・若手が就職したとしても、すぐに退職してしまう
・若手の人材不足により、技術や知識の継承が行えない
就職する若手が少ないため、建設業を活気づけるための入口でもつまずき、早期退職する若手が多いため、建設業の持続力にも関わる出口でも、つまずいている状態が継続しています。
その結果、高齢化が急速に進み年齢に不均衡が生じ、人材不足や技術の継承など、建設業の将来に影を落としています。
最近の建設業を巡る状況について(厚生労働省)によると、60歳以上の職人が全職人の約25%を占める一方、29歳以下の若手は12%以下のため、人も足りない・技術を伝える相手も少ない状態です。
建設業に若手がいない・増えない・減る原因
若手の関心が建設業に向かない、向いたとしても長期就業に至らない原因は、建設業のイメージや雇用条件などが挙げられます。
きつい・汚い・危険のイメージが根強い
建設業には「きつい」「汚い」「危険」のイメージがあるため、若手が魅力を抱きにくい業界イメージが恒常化しています。
・きつい:肉体労働や長時間労働が当たり前
・汚い:泥や雨を受けながら作業をする
・危険:高所作業や工具など、危険な作業やケガをするリスクが高い
嫌煙したくなる要因が、若手が抱く建設業のイメージに根強く存在しています。
雇用が不安定
職人として働く際の雇用形態が不安定であることも、若手が建設業を志しにくい理由のひとつです。
厚生労働省によると、職人の60%以上に日給制が適用されています。
日給は、働けば働く分、手取りが増える側面がある一方、働けない日があると、ダイレクトに手取りに響きます。
月給と比較すると、安定性には欠ける働き方です。
雇用条件が魅力的ではない
建設業においては、すべからく雇用条件が良く、魅力的な求人ばかりとは言えません。
時給換算すると、労働した対価としては安く感じる若手も多くいます。
また、工具をはじめ、自己負担でそろえる仕事道具も複数あります。
割に合わない給与や自己負担の割合が多いと感じると、若手は他の業界へ流れていきます。
プライベートの時間が少ない
自分のために使える時間の確保が難しい働き方も、若手が遠ざかる要因のひとつです。
建設業は、長時間労働や週6日の勤務が珍しくないため、プライベートの時間が少ない業界と言えるでしょう。
ワークライフバランスに改善の余地が多い、とも言えます。
個人差はありますが、仕事以外の時間も重要だと感じる若手は多くいます。
危険の多い仕事内容
建設業は、作業中にケガや事故が起きる可能性が高い業界のひとつです。
理解した上で入社したとしても、ケガは怖いことであり、ケガをしないために毎日神経をとがらせる環境は、どうしても疲れがちになります。
若くして大きなケガをしたり、心身にストレスを負ったりする可能性がある業界は、若手が就職をためらう要因になり得ます。
現代の若者を育てる環境が整っていない
現代の感覚をもった若手に対し、従前の雇用条件や感覚で指導することは、すべて良い結果につながるとは限りません。
従前の方法が悪いわけでは決してありませんが、現代の若手を育てる環境や手法としては、適さないケースもあり得ます。
若手不足や後継者不足に悩むのなら、若手の感覚によりそうことも重要です。
若者が離れない・育つ業界を作るための前提条件
若手が入らない・去ってしまう環境を打破するためには、原因を考える前に、現代の若手の考え方や環境を知らないといけません。
若手が退職する理由を再考する
若手が去った原因を正確に分析し、対策を講じないと若手の流出は続きます。
しかし、若手が育つ前に退職する理由について、企業が考えている理由と、若手が考えた理由に乖離があります。
・企業は、作業がきついから退職したと思っている
・企業は、(若年技能労働者の)職業意識が低いから辞めたと思っている
・企業は、現場での人間関係が難しいから去ったと思っている
(出典:国土交通省 建設業の働き方として目指していくべき方向性)
企業は、若手が辞めた理由を上記のように考えていますが、若手は退職理由として多く挙げていません。
改めて、若手が定着しない理由を理解し、対策を考えないといけません。
最近の高校生や若者の就活事情を考える
現在の若手の感覚によりそうだけではなく、就職活動に対する意識も知る必要があります。
就職先に期待する条件を把握すると、採用を行った際も、希望者が集まりやすくなるでしょう。
まずは、このようなポイントへの考慮が大切です。
・日給制ではなく、月給制:学生の生活の安定のため
・社会保険完全完備:学生の安全のため
・ワークライフバランスへの配慮:学生の心身の健康のため
他にもありますが、上記は学生や子どものことを思って、学校や親が望んでいる条件です。
建設業では、課題を抱えている分野ばかりですが、若手を望むなら、変えていくポイントです。
若手が定着する環境を作り上げる方法
若手が去る理由や意識を理解し、建設業に若手が定着して、技術を継承してくれる環境を形成するには、3つの方向からアプローチ可能です。
福利厚生の充足や資格を加味した給与設定
若手が志望する建設業にするためには、福利厚生や資格を加味した上で給与設定を行うなど、工夫が必要です。
建設業は事情がある業界ですが、多くの業界では、当たり前のように導入されている条件です。
社会保険・福利厚生が手厚い企業は、若手も安心して就労できます。
資格手当がある企業は、求職者の目にもとまりやすく、魅力的であり、能力を正当に評価してくれる姿勢も感じられます。
また、完全週休2日制や時間外労働上限の導入など、2024年問題として課題はありますが、若手に振り向いてもらえる環境作りとしては、有効でしょう。
業務効率化と生産性向上に取り組む
デジタル化が遅れ、業務として非効率だと感じると、若手が嫌煙する理由になり得ます。
新しい管理方法やツールを導入すると、若手も「新しいことも取り入れる会社」「最近のツールはわからないから、使わないという人がいない会社」として、ポジティブな印象を抱けます。
業務効率化と生産性の向上は、若手へアプローチできる要素だけではなく、企業としての利益率にも貢献します。
高齢化が進むと、どうしても新しいツールを取り入れる際は、反発が起こりやすくなりますが、建設業の将来を考えると重要な対策のひとつです。
女性の登用も考慮に入れる
女性の積極的な雇用も、人材不足を解消できる方法のひとつです。
女性は関心があまりないと思われがちな建設業ですが、建物を建てることへ、関心や情熱を持っている女性はいます。
建設業は、女性というだけで、なかなか一歩が踏み出しにくい業界です。
しかし、女性の登用を積極的に打ち出せると、人手不足だけではなく、雇用機会の増進などへ寄与する企業だとイメージを持ってもらえます。
女性の採用は魅力的である一方、女性が現場で働ける環境、例えば「トイレ」や「男性の理解」なども検討しないといけないため、課題はまだ多くあります。
まとめ
建設業は、人材が不足しており、その中でも若手が不足しています。
働き方改革や世情を受け、建設業も変わり始めていますが、完全に対応できている状態ではありません。
建設業の魅力度を向上させ、若手の関心を得るには、建設業のイメージの一新など対策が求められます。
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