施工プロセス検査業務導入で何が変わる?施工体制調査業務って何?それぞれについて解説します!
社会インフラは私たちの生活の基盤となるため、工事そのものの品質確保が重要です。
公共工事においては、総合評価方式が導入されることにより、価格と品質の確保が進められています。さらに工事自体の品質の確保という観点から、施工プロセス検査業務が導入されました。
本コラムでは、工事の品質を確保するための施工プロセス検査業務および施工体制調査業務について解説します。
目次
施工プロセス検査・施工体制調査業務とは
施工プロセス検査業務、施工体制調査業務について、簡単に説明しておきましょう。
施工プロセス検査業務とは、工事の施工プロセス全体を通し、工事の実施状況や完了部分及び品質に関して、現場に出向いて確認することで品質確保の体制強化を支援するものです。
施工体制調査業務は、建設業法によって定められている配置技術者が適切に配置されているかや、適切な施工体制がとられているかを確認し、適切な工事の実施を支援するものです。
両業務とも、その目的は「工事の品質の確保」であることがお分かりいただけると思います。工事の品質を確保することが、重要視されていることの証明と言えるでしょう。
施工プロセス検査業務導入の目的
従来の競争入札等による発注者と受注者の信頼関係に基づいた、工事の円滑な進行を前提とし、要点のみをチェックする方法では、施工ミスはもちろん、見えないところでの工事の不良などを発見することは困難でした。
また、発注者側にもプロジェクトに対する周辺住民の合意形成など、対応しなければならない業務が多様化したことにより、品質確保のための確認等が不十分になるなどの問題点が見られるようになりました。
そこで、従来のような発注者と受注者の信頼関係を基にした監督・検査業務への転換が図られます。それが、「施工プロセスを通じた検査」です。
施工プロセス検査業務を導入することで、発注者側の品質確保に対する取り組みや品質確保のための体制の強化を図りました。
さらに、入札や契約制度の転換だけでなく、工事の施工段階から適切な履行を確保することで、施工不良や事故等による品質の低下を防ぐことを目的としています。
施工プロセス検査業務の内容
施工プロセス検査業務の重要性について、ご理解いただけたと思います。ここからは、施工プロセス検査業務の具体的な内容をご紹介します。
施工プロセス検査業務の主な内容は、「段階確認」、「指定材料確認」、「工事施工の立ち会い」の3つです。
段階確認
段階確認とは、公共工事などで作成された設計図書に示されている施工段階、または監督職員が指示した施工途中における段階において、適切な施工が行われているか、品質が確保されているかを確認する業務です。
従来は、監督職員が行っていましたが、施工プロセス検査の導入により、段階確認については品質検査員が担当することになりました。
請負者においては、施工に先立って種別や細別、確認時期を施工管理計画として「施工計画書」に記載しておく必要があります。
また、種別や細別、確認時期は監督職員に事前に確認を受けて、「段階確認書」を作成、保管する必要があります。
段階確認を行う際、品質検査員は原則として現場に出向いて確認を実施することが定められており、段階確認書の確認項目に従って実施しなくてはいけません。
指定材料確認
公共工事などで使用される材料の品質や規格、数量などが適切でない場合、その品質が確保できない可能性があります。そこで、行われるのが指定材料確認業務です。
品質検査員は、設計図書において、工事材料の試験を行うことが決められている場合、JISまたは設計図書で指定された試験を行う必要があります。これに立ち会い、指定通りに試験が行われているかを確認しなくてはいけません。
また、工事材料は使用するまで、材質に変質が生じないように保管する必要があり、品質検査員はそれを現場に出向いて確認します。
このように、指定材料確認業務は、設計図書において指定された工事材料について、材料の品質や規格、数量等について立会試験、確認を行う業務です。
工事施工の立会い
品質検査員は、指定図書において立会いの上、施工を行うものとして指定された工種において立会いを行います。
工事施工の立会いを求められた場合、品質検査員は当該立会請求を求められた日から7日以内に工事施工の立会いを行わなくてはいけません。
本業務も、従来であれば監督職員が行うものとされていましたが、工事品質の確保の観点から品質検査員が当該業務を行うことになりました。
上記のように、施工プロセス検査業務は、従来監督職員が行っていた現場確認業務を、品質検査員が担当するようになったものです。
これにより、監督職員の業務負担が軽減され、監督業務に専念できるようになったことで、一層の工事品質確保の体制が強化されるようになりました。
施工プロセス検査業務導入のメリット
施工プロセス検査業務が導入されたメリットとはどのようなものがあるでしょうか。
まず、工事目的物の品質確保があげられます。品質検査員が現地を確認する頻度が多くなり、品質が確保され、粗雑な工事や不正行為が防げるようになりました。
次にあげられるのが、監督・検査業務の効率化です。特に、検査業務においては工事書類や現場の確認が大幅に削減できるため、検査の効率化が可能です。
工事において行われる既済部分検査において、施工プロセス検査業務が導入された場合、既済部分検査技術基準にかかわらず、品質検査員による施工プロセス検査チェックシート等の結果に基づいて、契約内容に合った履行がされているかの判断を行うことができます。
また、完成検査においては、総括検査職員が施工プロセス検査チェックシート等の結果を積極的に活用することで効率化を図ることが可能です。
技術検査においても、施工プロセス検査チェックシート等の確認による完成検査が行われることで、中間技術検査は原則として省略が可能となるなど、検査業務は大幅に効率化が図られています。
さらに、出来高部分払方式が採用され、受発注者相互がコスト意識を持ち、短期間で出来高に応じた部分払いが可能になりました。
これにより、円滑な工事代金の流通を確保し、受注者のキャッシュフローが改善されることで、質の高い施工体制を確保につながるというメリットあります。
施工体制調査業務の内容
公共工事において、品質の確保は重要事項のひとつであることは、上記からもお分かりいただけたのではないでしょうか。
工事の品質確保には、適正な施工体制のもとに工事を行うことが欠かせません。
適正な施工体制のもとに工事が行われているかどうかを、配置される技術者や協力会社との契約などが法令を遵守しているかどうかを調査するのが、施工体制調査業務です。
つまり、施行中の各工事現場において、適正な施工体制で工事が行われているかを定期的に巡回してチェックする業務を言います。
具体的には、工事における許可業種の確認や、配置されている技術者の保有資格の確認および常駐の確認、業者間の契約内容の確認、社会保険加入状況の確認、建設業許可票の掲示の確認などがあげられます。
まとめ
私たちの生活に直結する、社会インフラ整備。その工事においてミスや工事における不良があると、重大な事故につながる可能性もあります。
そのために重要となるのが、工事自体の品質確保です。工事の品質が確保されることで、信頼性も確保されることにつながっていきます。
その工事自体の品質確保に貢献しているのが、施工プロセス検査・施工体制調査業務の仕事です。このような、社会インフラ整備を支える重要な仕事に携わってみたい方は、「発注者支援業務」もおすすめです。
発注者支援業務は、国や都道府県などの自治体や、官公庁が発注する公共事業の発注業務をサポートする仕事です。
公務員と同じような年間休日や勤務時間など職場環境も整っており、安定的な仕事であることも魅力のひとつでしょう。
国民の生活を支えるインフラ整備に関われる「発注者支援業務」の仕事も、ぜひ視野に入れてみてください。