Construction column
【職種紹介】積算技術業務とは何か?業務内容や資格まで解説
2024.3.23
建築関連の業務は設計や現場での「モノを作る仕事」だけではありません。建物を建てる舞台裏にも多くの仕事があり、それと連携して進行しているのです。
積算もその仕事の内の1つであり、非常に重要な仕事です。これにより建物のコストが計算されるからです。そして、積算技術業務は積算のための調査や資料の作成などを担当する業務。まさに裏方の仕事です。しかし、表の仕事のために非常に重要であることには違いありません。
そこで、ここでは積算技術業務について、積算からはじめて必要な資格までを解説します。
目次
積算について
まずは積算について解説しましょう。
建築に関する記事を読むと頻繁に出て来る用語ですが、どのような意味なのでしょうか。
積算とは何か
積算とは簡単に言うと「工事の価格を計算すること」と言えます。
例えば、工業製品の価格はその製品の材料費や作る際の加工費、組み立て費、更には運送費や人件費まで含まれます。それらの価格を積み上げて物品の価格が決まるのです。
これは土木や建築の工事の場合も同じで、工事に使用する様々な部材・部品、人件費などを合計してコストが算出されます。積算はこの計算を指すのです。
なぜ積算は必要か
前述の通り、物品の価格はすべての材料や工程で発生する費用の合計となりますが、これは売る側の都合です。買う側としては購入前に価格を知らなければいけません。特に、道路や橋などのような大型の構造物であれば、発生する費用が巨額になるので、なおさらです。
積算は工事の前に算出する価格です。発注時や契約変更時に出される予定価格を指します。
そして、工事を発注する側はこれによって決定するので必要なのです。
積算と見積りの違い
積算と似ている用語に「見積り」があります。どちらも価格を指す用語なのですが、両者は異なります。
というのも積算は「作る費用」を示すのであり、見積りは「作る費用に企業の利益を合わせた費用」を指すからです。
建設会社も営利目的で運営しているため、利益は取らなければいけません。ですから、積算で出した費用に自社の利益を上乗せして出した費用が見積りなのです。
積算技術業務とは何か
次に、積算技術業務について解説します。
積算技術業務とは何か
前述のように、積算は工事に必要な費用を合算する作業ですが、建築物を具体的に考えるならば、様々な技術的な作業が必要となります。
良い例が現地調査です。
工事をはじめる場合は現地の状況を知らなければいけません。建物などは現地の状態で工事も変わる可能性があるので、現地調査は不可欠なのです。
また、工事発注図面や数量の算出なども必要となります。部材や部品の仕様を決めて数量を出さなければ、費用の合算は出せないからです。
そして、これらを計算システムに入力して資料化することも必要です。
積算技術業務はこれら一連の作業を行う仕事なのです。
積算技術業務の目的
積算技術業務の目的は基本的には国土交通省の業務の支援と言えます。
国土交通省も闇雲に発注するのではありません。
しかし、国土交通省であっても建築物の図面を解析して部材の拾い出しまでは行いません。この部分は民間に任せることになります。
積算技術業務は工事で発生する部材や工事の内容を解析し、部材や部品を拾い出しを行い、スムーズに工事の予定価格を算出できるように支援することなのです。
守秘義務を負う
積算技術業務には守秘義務が伴います。
義務の第1は業務上知り得た秘密を他者に漏らしてはいけないこと。第2に業務の処理の結果を漏らしてはいけないこと、また、貸与された情報なども漏らしてはいけません。
そして、業務の終了後は秘密となる資料などを発注者に返却や破棄を必ず行わなければいけません。
積算は資金を扱う仕事のため、シビアでなければいけません。そのため、バックにある積算技術業務も秘密を守らなければいけないのです。
積算技術業務の業務内容
それでは、積算技術業務の具体的な業務内容はどのような仕事なのでしょうか。
①工事内容打ち合わせ
工事のためには工事の計画案や仮の設計計画、そして設計に伴う特記仕様書などが必要です。
これは最初の段階での工事内容の打ち合わせの際に行われます。
なお、この打ち合わせは工事単位で行われることが標準です。しかし、複数の工事が行われる場合には打ち合わせもまとめて行われる場合もあります。
②積算に必要な現地調査
次に行われるのが現地調査です。
ただし、現地調査においても許可がなくてはならず、最初に現地調査の必要性がチェックされます。
現地調査を行った後は資料にまとめて提出します。
③施工計画の検討
施工計画も検討しなければいけません。
発注方針や現地条件などを把握し、工事の施工計画を検討します。
④工事発注図面及び数量総括表の作成
次に行うのが工事発注図面と数量総括表の作成です。
設計に関連する資料をベースに工事計画書をチェック・加工して資料にまとめます。
⑤積算資料の作成
資料の作成も行わなくてはいけません。
工事には前述のような部材や部品が発生しますし、施工方法なども挙げられます。
そして、それらを元に積算システムに入力する数値の算定を、この段階で行います。
⑥積算システムへの積算データ入力
前の段階で算出した数値を積算システムに入力します。
入力ミスをしてしまうと全体の計算が狂うので、シビアに仕事を進めなければいけません。
⑦成果物の提出
一連の仕事の成果を提出します。
ちなみに、預かった情報は確実に返却・破棄を行わなければいけません。最終段階でこの処置を行い、業務が終了します。
建築積算業務の関連資格…建築積算士
積算技術業務を行うのであれば資格を取っていた方が有利です。
その資格が建築積算士なのですが、どのような資格なのでしょうか。
建築積算士について
建築積算士は積算に関わる資格と言えるでしょう。
とかく公共工事は規模が大きいので部材の手配なども非常に多くなり、業務には高度な技術が要求されます。
建築積算士はそのような業務のプロフェッショナルとしての資格なのです。
なお、この資格保有者が企業にいると企業にとっても利益に繋がります。それは、公共工事の入札を行う際に、建築積算士の資格保有者の有無により評価を変えるからです。
建築積算士制度とは
建築積算士は公益社団法人日本建築積算協会の認定する民間資格です。
目的は建築積算の知識と技術の向上と、それによる建築コストの適正化、建築物の高品質化などを目的としています。
資格に求められる知識は、生産プロセス・工事発注スキーム・設計図書構成・工事費構成・積算業務内容に関するもの・市場価格に関する知識・施工技術など、非常に多岐に及びます。
なお、資格には試験があり、1次試験は学科、2次試験は実技となっています。
まとめ
積算技術業務について取り上げました。裏方ではありますが、非常に重要な業務であることが理解できたことと思います。また、資格について述べましたが、必要な知識が多岐に及ぶことも理解が出来たのではないでしょうか。
建築は大きな規模になると部材や部品の数が大きく膨らみます。そして、そのチェックには高い技術力が必要です。建築積算業務は高度な技術力でその対応を行う仕事です。
ただ、仕事としては建築のバックグラウンドを知る重要な位置にいますので、やりがいのある仕事です。目指してみるのも良いでしょう。