Construction column
【発注者支援業務に携わる人も知っておくべき】公共施設の建設など工事の入札に関する流れや確認事項について解説
2023.4.29
発注者支援業務は公的な立ち位置で、しっかりと現場を管理する立場にあります。発注者支援業務を目指されている人や、すでに職務に就いている人にとって、工程通りに進める民間施工業者にお願いしたいことでしょう。
さて、実際に工事をする民間業者はどのように選定されるかご存知でしょうか?
民間業者が公共施設の建設に携わる際には、さまざまな契約制度や条件が設けられています。
また、公共機関は1社に声を掛けるのではなく、公募を行ってさまざまな業者を募集し、そのなかから最適な業者を選びます。
公募は入札形式を採用しており、業者が提出した書類や見積価格などから判断されます。
今回は、発注者支援業務に携わる人も知っておいて損はない、公共施設の建設など工事の入札に関する流れや、確認事項などをご紹介します。
目次
公共施設の工事の入札に関する概要
公共施設の入札契約制度は国土交通省によって決められています。
公共機関が受注業者に求める条件は、コストの低減・品質の確保・不正行為の防止などです。
これらを実現するために、公共機関では下記を実践しています。
- 公正な入札の実施
- 透明性の向上
- 監督検査の徹底
- 不良不適格業者排除 など
業者はこれらの条件を承知したうえで、入札に参加する必要があります。
入札方法
公共施設の入札方法には、下記のように「競争入札」「予定価格制度」「最低価格自動落札」の3種類があります。
競争入札
契約の性質などに応じ、一般競争入札・指名競争入札・随意契約などによって選出する方法です。
一般競争入札は参加資格を有するすべての民間業者が参加できる入札方法で、その分参加者の数は多くなります。
過去に実績がなくても参加・落札に至る可能性がある点が特徴です。
指名競争入札は、事前に公共機関が入札に参加できる民間業者を選定している入札方式です。
過去に公共施設の入札に参加・建設実績がなければ参加できないため、まずは一般競争入札に参加しましょう。
随意契約は特定の業者に対して声を掛け、直接契約を締結する方式です。
しかし、ほかの企業と比べると公平ではない契約方法のため、随意契約は縮小傾向にあります。
予定価格制度
予定価格制度は、入札を行う際に公共施設が工事予算の上限を設けている制度です。
先述の通り、公共施設は低コストで高クオリティの建物を求めます。
そのため、あらかじめ設けていた予定価格を下回る入札業者のなかから、最も低価格の業者が落札します。
一般的には、予定価格の80%程度の価格で落札するのが相場と言われています。
しかし、事業によっては予定価格を公表していないことがあります。
そのため、近年では入札の透明性を高めることを目的として、一定の基準に沿って予定価格を公表する公共機関が増加傾向です。
最低価格自動落札
最低価格自動落札は、入札者のなかで最も低い落札化価格で参加した業者に決定する方法です。
公共機関は低価格で工事を依頼できますが、クオリティを担保するために下記のような例外が設けられています。
・総合評価制度
技術力・実績・表彰歴・安全性・地域貢献度などの観点から落札者を決めます。
・最低制限価格制度
採算を無視した安売りを防ぐために、最低価格に制限を設けます。
・低入札価格調査制度
最低制限価格と同様に、採算を度外視した安売りを防ぐことが目的です。
このように、公共施設の建設の際にはさまざまな入札方法が採用されています。
入札前に準備しておくこと
入札に参加する前には、参加資格の有無を確認し、必要な書類などを準備しましょう。
資格審査
公共施設の工事に関する入札へ参加するためには、下記のようにさまざまな許可や審査を通過する必要があります。
建設業許可
建設業を始める際には下記の条件を除き、建設業許可が必要です。
- 1,500万円未満の建設工事
- 延べ面積が150㎡未満
- 500万円未満の工事
また、建設業許可は「特定建設業」と「一般建設業」の2種類が含まれます。
【特定建設業の許可】
特定建設業の許可は、3,000万円(建築では4,500万円)以上の工事を下請けに出す建設業者に求められます。
許可基準は下記のように設けられており、すべてを満たす必要があります。
- 常勤役員に5年以上経営業務の管理責任者を配置
- 営業所ごとに建設業の種類に応じた高度な技術検定の合格者・資格取得者を専任で設置
- 資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上
- 欠損額が資本金の20%以下
- 流動比率70%以上
【一般建設業の許可】
一般建設業は、特定建設業の許可が必要な業者以外の建設業者に必要であり、下記の許可基準を満たすことが条件です。
- 常勤役員に5年以上経営業務の管理責任者を配置
- 営業所ごとに技術者を専任で設置
- 財産的基礎要件(自己資本500万円以上)
一般的な500万円未満の工事であれば建設業許可は不要ですが、公共施設の工事には必ず建設業の許可が求められます。
経営事項審査・競争参加資格審査申請
経営事項審査は国土交通省の認可を受けた、経営状況分析機関が行う審査で、経営状況や規模、技術力が数値化されたものです。
公共機関は業者の財務状況や経営状況などを、審査の際に重要視します。
たとえば、少ない収益で経営状況が悪い業者に依頼すると、工事途中で経営破綻や頓挫といったリスクが発生する可能性があります。
そのため、公共機関は工事を依頼する前に対象となる業者について、可能な限り詳しく知っておきたいものです。
しかし、競争入札のように複数の業者が参加する施設の場合、多くの時間を要してしまいます。
そこで、経営状況が数値化された経営事項審査が導入されるようになりました。
これらの情報をもとに、競争に参加する業者の資格審査を行います。
公共施設の工事の入札に関する流れ
入札に参加する前には、参加資格の有無を確認し、必要な書類などを準備しましょう。
案件を探す
公共機関の建設を希望する業者は、国土交通省や各地方自治体のホームページなどで案件を探します。
案件によっては入札方法や入札期限など、さまざまな条件が設定されています。
また、参加資格も求められるため、「入札参加資格確認申請書」を提出し、参加資格を満たしているのかを確認しましょう。
そのため、自社に合った最適な案件を探すことが重要です。
入札説明会に参加する
建設を希望する案件が見つかったあとは、その案件に関する説明会に参加し、詳しい情報を入手しましょう。
入札説明会では資料が配布されますが、第三者への情報共有が禁じられていることがあるため、取り扱いには注意が必要です。
最低価格や応募条件などを考慮し、入札に参加するべきなのかを判断しましょう。
審査に必要な書類を準備する
入札条件を満たしており、建設を希望する業者は先述した建設業許可や経営事項審査などの書類を準備します。
行政機関や建設物によって必要となる書類が異なるため、事前に必要な書類を確認しておきましょう。
必要な書類が準備できていなかった場合、それだけで落選してしまう可能性があるため注意が必要です。
書類を用意し、入札が完了したあとは公共機関が審査を行うため、結果を待ちましょう。
落札・契約の締結
審査を通過した業者のなかで、落札の連絡が送られた業者に決定します。
見積金額や施工日などは事前に決まっているため、その条件に沿って着工しましょう。
公共工事と民間工事との違い
公共工事と民間工事では、発注者や使用する金額といった違いが挙げられます。
公共工事は発注者が市区町村や地方自治体が発注者であるのに対し、民間工事では民間企業が発注者となります。前者の場合に発注者支援業務が活躍します。
また、公共工事は市民から徴収した税金で工事が行われますが、民間工事では企業の資本金や融資を受けた資金が使われます。
建築物については大きな違いがあり、公共工事は公共性を重視しますが、民間工事は利益を生み出すことを重視する傾向にあります。
まとめ
今回は、公共施設の建設など工事の入札に関する流れや、確認事項などをご紹介しました。
公共施設の建設業者は競争入札や予定価格制度、最低価格自動落札といった入札方法で決定します。
入札に参加する前には、建設業許可や経営事項審査・競争参加資格審査申請といった許可や審査が必要です。
公共施設の工事を落札するためには、案件を探して説明会に参加し、書類を用意してから審査を受けます。
契約を締結したあとは事前に提示した条件に従って着工します。
発注者支援業務の仕事に興味を持っている人は、どのように民間施工業者が決まっていくのかを理解すると、業務内容を深く理解することができるでしょう。