Construction column
2024年に建設業の働き方改革が強化!取り組みについて詳しく解説します
2022.12.19
2024年4月からは、建設業でも時間外労働の上限規制が適用されることをご存知でしょうか。
建設業では、労働環境の改善やITの活用など数々の取り組みを進めてきましたが、これまで以上に働き方改革が強化されるといわれています。
今回の記事では、建設業の働き方改革ではどのような取り組みをしているのかについて詳しく解説していきます。建設業で働く方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
建設業の働き方改革が進められた理由
そもそも、なぜ建設業で働き方改革が進められてきたのでしょうか。
ここからは、建設業で働き方改革が進められている理由について、現場や課題を交えて詳しく解説していきます。
建設業の労働環境の改善
建設業では「長時間労働」や「休日の少なさ」などの労働環境の課題が多くあげられます。
令和3年11月に国土交通省が発表した「建設業の働き方改革の現状と課題」によると、年間労働時間や年間出勤日数がわかります。
2020年度における年間実労働時間については、全産業が1621時間であるのに対して建設業は1985時間です。
全産業に比べて建設業の年間実労働時間は364時間長いことから、早出や残業などの時間外労働が多い業界であることが分かります。
また、2020年度における年間出勤日数については、全産業が212日であるのに対して建設業は244日です。
全産業に比べて建設業の年間出勤日数は32日多いことから、休日が少ないことが分かります。
建設業の中でも建設工事に関わる場合に着目すると、4週8休の作業所もあるものの4週4休や4週3休の作業所もあります。
建設業の労働環境を改善するためにも、働き方改革を進めていくことが重要です。
人材の確保
建設業では就業者の高齢化が進んでおり、技術伝承のために若手技術者などの担い手を確保することが大きな課題となっています。
建設業の就業者数は、平成9年から平成22年にかけて減少傾向にあります。
平成9年の建設業就業者数は685万人であるのに対して平成22年は498万人まで減少。さらに、令和2年には492万人まで減少しています。
また、建設業就業者数を年齢別にみると、55歳以上が全体の約36%であるのに対し29歳以下の若手が約12%です。
建設業では技術者不足が大きな課題としてあげられるため、人材確保のためにも働き方改革を進める必要があるといえます。
建設業の働き方改革の取り組み
ここからは、建設業の働き方改革の取り組みについて解説していきます。
2019年に施行された「働き方改革関連法」により、労働環境をより良いものにするために取り組みが進められてきました。
建設業の場合は、時間外労働や休日、人材不足などの課題をすぐに解決するのが難しいと判断されたため、5年間の猶予期間が与えられました。
しかし、猶予期間の5年が終了し2024年4月からは、時間外労働の上限規制が適用されるのです。
時間外労働の上限規制が適用されると「原則月45時間、年360時間」の上限が設けられます。
特別条項でも上回ることができない時間外労働が定められており、年720時間以内と決められています。
また、一時的に業務が増える場合でも、2〜6ヶ月の時間外労働時間の平均はいずれも休日出勤を含んだ80時間以内です。
他にも、休日労働を含む時間外労働時間において「単月100時間未満、月45時間」を上回る時間外労働は年6回までと定められています。
建設業の働き方改革のポイント
建設業でも働き方改革が進められていますが、押さえておきたいポイントがあります。ここからは、建設業の働き方改革のポイントについて解説していきます。
適正な工期と時期を設定する
働き方改革を進めるためには、適正な工期と時期を設定することが重要です。
「週休2日を実現させる」という目標があったとしても、厳しい工期が設定されていれば実現は難しいでしょう。
冬季の工事では、積雪など天候によって作業不能日も発生することもあるため、作業不能日を考慮した上で適正な工期を設定しなければなりません。
また、資材の発注などは時間を要する場合もあります。準備を含めてどれくらいの日数を要するかを明確にして工期の設定に反映する必要があります。
設定した工期が適正でない場合は各作業場の工期に余裕がなくなってしまい、その結果工程の遅れを取り戻すために時間外労働や休日出勤も増えてしまいます。
「施工時期を加味した工期設定ができているか」ということは、工期設定の際に押さえるべきポイントです。
発注者と受注者は対等な立場であること
建設業で働き方改革を進めるためには、発注者と受注者の理解と協力は欠かせません。
また、発注者と受注者は対等な立場で契約を結ばなけれればならないのです。
たとえば、受注者が時間外労働や休日など労働環境の整備のために対策を行っていたとしても、発注者が厳しい納期を設定してしまうと働き方改革を進めるのが難しいです。
発注者の要望通りの工期を設定すると、工期に間に合わせるために残業や休日出勤をする場合もあるでしょう。
長時間労働や休日により、時間外労働の上限を超えてしまうことが考えられます。
建設業全体の働き方改革を進めるためにも、発注者と受注者が相互理解を深め協力しあうことが重要です。
工事内容や請負金額だけではなく、工期の設定も対等な立場で決定しなければなりません。
発注者支援の活用
発注機関によっては、技術者の不足などが原因で適正な工期を設定することが難しい場合もあります。
発注者機関で適正な工期を設定することが難しい場合は、発注者支援を行っている建設コンサルタントなどの外部機関を活用することも1つの方法です。
適正な工期を設定することによって労働環境の改善が期待できるため、発注者支援業務が果たす役割は大きなものといえます。
建設業の働き方改革の事例紹介
建設業の働き方改革は、具体的にどのような対策を行っているのでしょうか。ここからは、実際に働き方改革を進めている企業の事例を紹介していきます。
戸田建設株式会社
戸田建設株式会社には、現場の省力化を実現した働き方改革の事例があります。
東京ドーム3つ分の敷地面積、60mもの高低差がある一般廃棄物最終処分場の造成工事では、3台のドローンを活用して現場管理を行いました。
広大な現場では、職員自らが現場へ向かって管理をすることは難しいです。しかし、3台のドローンを活用することで少人数の職員で管理ができるようになりました。
現場の巡視用や施工管理用、緊急時用とそれぞれの用途を分けてドローンを活用することで、省力化と効率化の2つを実現させた事例といえます。
名工建設株式会社
名工建設株式会社の働き方改革の取り組みは、時間外労働の削減です。
所定休日の土曜日のうち、毎月第2土曜日は作業所を閉所する取り組みを行っています。
1ヶ月の時間外労働は、平成26年から平成27年までに約1時間減少したという結果になりました。
建設業では4週4休以下の作業所があるといわれていますが、作業所の閉所率を上げたことで時間外労働が減少し、職員の働きやすい労働環境を整備できたといえます。
まとめ
今回の記事では「建設業の働き方改革」をテーマに解説しました。
現在、国土交通省が発注した公共工事を中心に働き方改革が進められています。ただ、民間の建設工事では具体的な対策が進んでいないこともあるでしょう。
当社では、公共工事の発注機関を支援する発注者支援業務を行っています。発注者支援業務は公共工事に携わるため、労働環境が整っている中で業務ができます。
ご自身が仕事を選ぶ上での基準を知るためにも、ぜひ発注者支援業務についても理解を深めてみてくださいね。