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建設コラム

積算に関わる資格「建築積算士」とは?内容と取得方法を解説

2024.7.17

建築工事にかかる費用を算出する積算に関わる資格である建築積算士。

積算業務は無資格でも行えますが、資格所有者は積算に必要な知識と経験があることを認められるため、転職やキャリアアップを目指す際に有利になります。

今回の記事では、建築積算士試験の受験資格や受験内容、取得のメリットについて詳しくご紹介します。

積算業務への転職や建築積算士の資格取得を検討している方にとって、おすすめの内容です。

ぜひ、最後までお読みになり参考にしてみてください。

この記事のポイント

  • 積算の概要とやりがい
  • 建築積算士の資格取得について
  • 建築積算士試験に合格するための勉強法

積算とは

積算とは、建設工事に必要な費用を予測し、積み上げて算出することです。

具体的には、設計図や仕様書、建設現場の環境などを参考に人件費、材料費、工事費などを計算します。

算出された金額は、工事を遂行するか否かを決定する材料になるほか、公共事業で入札を行う際、適切な価格を把握したり、建設業者を比較したりする際にも活用されます。

積算の詳しい業務内容や注意点については以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

積算技術業務とは?どんな業務なのか解説します

積算業務のやりがい

積算の最もやりがいのある点は、建設工事の最初のステップに関わり、利益を左右する業務に取り組めるというところです。

どのような規模の工事でも、積算によって算出された費用をもとに進められます。

積算の精度が高いほど、最低限の予算で高い利益を出すことが可能です。

逆にミスをすると予算と実費が合わなくなり、損失が生じてしまうこともあります。

責任の重い仕事ですが、自分の積算によって工事が滞りなく完了し、自社に利益をもたらせられれば、大きな達成感を感じられるでしょう。

積算業務の内容ややりがいについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。

積算は未経験でも転職できる?業務内容ややりがい、平均年収なども解説

積算業務に必要な能力

積算業務に必要な能力としては、「計算能力」と「細かいことにコツコツ取り組む誠実性」が挙げられます。

積算は小さなミスが大きな損失につながる業務です。

難しい計算はありませんが、だからこそ集中して取り組む堅実さが求められます。

また、コミュニケーション能力も重要です。

積算では施主や現場監督、請負業者など、さまざまな立場の人と交渉したり、不明な点を尋ねたりする必要があります。

相手の立場に立ったきめ細やかなコミュニケーションができれば、円滑に業務が進むでしょう。

積算に関わる資格「建築積算士」

積算業務は資格がなくてもできますが「建築積算士」の資格があると有利です。

建築積算士とは、積算業務に関わる高度な知識を有していることを証明する資格です。

かつては国土交通省認定の資格でしたが、行政改革の一環として、2001年からは「公益社団法人 日本建築積算協会」が認定する民間資格となっています。

建築積算士資格取得のメリット

建築積算士の資格所有者は、積算のスペシャリストとして認められ、キャリアアップに有利に働きます。

具体的なメリットは以下の通りです。

転職活動で有利になる

建築積算士の資格を取得すると、転職活動で有利に働きます。

代表的な転職先は以下の通りです。

・ゼネコン
・建設会社
・住宅建売業者
・工務店
・積算事務所

また、官公庁への転職も視野に入れられます。

先述の通り、公共工事では業者比較や適正価格の把握のために、精度の高い積算が必要になるためです。

建築積算士は国家資格だったこともあり、国土交通省や地方自治体の建築関連部署といった公務員の認知度が高い点も強みです。

建築業界にホワイトカラーで就職できる

積算は建築分野の職種でありながら、事務系(ホワイトカラー)に分類されます。

正しい費用を把握するために現地調査をすることもありますが、基本はデスクワークです。

建築分野で働きたいけれど体力に自信がない人や、ケガや健康上の問題で現場仕事ができなくなったという人も、積算という重要なポジションで建築業界と関わり、大きな仕事を成し遂げられます。

給与やキャリアアップにつながる

建築積算士の資格を取得することで、昇給、昇進できる可能性もあります。

建築積算士の年収は企業規模や勤続年数によっても異なりますが、400〜900万円程度が相場です。

中には年収1,000万円以上を得ているケースもあり、建設業としてもトップクラスの年収を狙える可能性もあります。

また、資格手当を受給できる場合もあります。

建築積算士の資格手当は企業によって異なりますが、月額5,000~10,000円程度が多いようです。

また、建築積算士の上位資格である建築コスト管理士を取得することで、さらなる昇給やキャリアアップを目指せます。

積算業務に興味のある方は、ぜひMACにご相談ください。

建築分野の就職に関して、プロフェッショナルの立場からアドバイスいたします。

ご相談は以下のリンクから、無料LINEで承っているのでぜひご連絡ください。

建築積算士の資格試験について

建築積算士の資格を取得するためには、日本建築積算協会が実施する資格試験に合格する必要があります。

試験は一次、二次があり、原則として一次試験合格者のみが二次試験を受験できます。

※所定の資格所有者、または日本建築積算協会が実施する積算学校卒業生は一次試験免除

建築積算士の受験資格

建築積算士試験は17歳以上であれば学歴や実務経験の有無に関わらず、誰でも受験できます。

他分野から建築業界に転職したいという方にも取得しやすい資格です。

建築積算士の受験者数と合格率

2023年度の建築積算士の受験者数と合格率は以下のようになっています。

 実受験者数合格者数合格率
一次試験430人285人66.3%
二次試験988人613人62.0%

出典:公益社団法人 日本建築積算協会 建築積算士認定事業による2023年度建築積算士一次試験実施結果

出典:公益社団法人 日本建築積算協会 建築積算士認定事業による2023年度建築積算士二次試験実施結果

一次試験、二次試験ともに合格率は60%程度です。

二級建築士の合格率が25%程度、建築施工管理技士二級の合格率が30%程度であることを考えると、建築分野の中では難易度が低いといえるでしょう。

建築積算士の試験内容

建築積算士試験の問題は、日本建築積算協会が発行する「建築積算士ガイドブック建築積算士試験」に沿って出題されます。

出題される科目としては、以下のようなものが挙げられます。

生産プロセス建設産業の特徴と変遷及び現状
コストマネジメントの考え方
建築生産プロセスとマネジメント
工事発注スキーム入札の種類
発注方式
契約方式
数量公開
発注単位
設計図書構成設計図書構成と種類
優先順位
工事費構成直接工事費と共通費の構成
主要建物用途の種目別工事費構成比率
積算業務内容積算業務の流れ
積算実務(仮設、土工、躯体、仕上、設備、屋外施設、改修)
概算手法の概要、値入業務
数量積算基準基準及び同解説の理解
標準内訳書式基準及び同解説の理解
主要な市場価格市場価格
コスト情報の入手方法
データ分析と積算チェックデータ整理
歩掛
分析方法
積算チェック
施工技術概要建築施工プロセス
標準的な施工法
特殊工法(省力化、工業化、工期短縮等)
LCC・VE概要LCC(ライフサイクルコスト)の概要
VE(バリューエンジニアリング)の概要
木造建築概算
BIM(Building Information Modeling)概要
改修工事・解体工事概要
環境配慮概要:環境配慮とコスト概要

出典:公益社団法人 日本建築積算協会 2024年度「建築積算士」試験案内

試験方法と出題形式は以下の通りです。

試験時間問題数問題形式
一次試験3時間50問4 肢択一
二次試験(短文記述試験)1時間2問問題に対する解答を短文(200字以内)で記述
二次試験(実技試験)4時間30分4分野・図面に基づき、数量を計測・計算
・内訳明細の作成

出典:公益社団法人 日本建築積算協会 2024年度「建築積算士」試験案内

建築積算士試験を受験するためには

建築積算士試験の申込方法、受験料、試験会場は以下の通りです。

一次試験二次試験
申込方法協会ホームページの応募フォームより応募
受験料27,500円(税込) (学生会員は 13,750 円)27,500円(税込) 
(学生会員及び建築積算士補は 13,750 円)
今年度第一次試験合格者は受験料不要
試験会場札幌/仙台/東京/名古屋/大阪/岡山/広島/福岡/鹿児島/沖縄(全国 10 都市 10 会場)札幌/仙台/東京/名古屋/金沢/大阪/岡山/広島/福岡/鹿児島/沖縄(全国 11 都市 11 会場)

出典:公益社団法人 日本建築積算協会 2024年度「建築積算士」試験案内

建築積算士の試験に合格するための勉強法

建築積算士はしっかり勉強をしさえすれば、未経験でも取得可能です。

しかし、合格率は60%と、難易度は高くないものの誰もが合格できる試験ではありません。

建築積算士の試験に合格するためには、しっかり勉強する必要があります。

特に効果的な勉強法をご紹介しましょう。

建築積算士ガイドブックを十分に読み込む

先述の通り、建築積算士試験は建築積算士ガイドブックから出題されます。

建築積算士ガイドブックには試験問題と程度が提示されており、試験のテキストとして活用できます。

ガイドブックを十分に読み込み、内容を理解することが一番の勉強法です。

建築積算士ガイドブックは改訂されることもありますので、必ず最新版を用意しましょう。

日本建築積算協会の「書籍申込フォーム」から申し込むと、確実に最新版が手に入ります。

出典:公益社団法人 日本建築積算協会 ガイドブックの紹介 

過去問を繰り返し解いて実戦形式に慣れる

日本建築士積算協会のホームページには、2011年度〜2023年度の過去問が掲載されています。

実際に解いてみることで、実戦形式に慣れましょう。

特に実技試験は、4時間30分という長時間で実際に積算をする特殊な形式のため、本番でどのような問題が出題されるのか、過去問から学んでおくと安心です。

ただし、あまりに古い過去問は当てにできません。

法改正などにより現行と内容が異なっていたり、出題傾向が変わっていたりすることがあるためです。

過去問を解く目的は、時間配分や出題形式、自分の苦手分野を把握することです。

まずは最新のガイドブックを良く読み、正しい知識を得た後で、過去問に取り組みましょう。

積算学校や積算教室に参加してみる

日本建築積算士協会は、積算の知識を広く提供する機会を多数設けています。

代表的なものが「積算学校」、「積算教室」です。

積算学校では、積算技術者の養成を目的とした実践的なカリキュラムが組まれています。

卒業生は一次試験が免除される点も受講の大きなメリットです。

積算教室は積算学校より短期で開催されるもので、主要な積算業務に限定された内容です。

仕事が忙しい人も、効率良く積算について学べます。

加えて、社会経済の変化や建設業の動向に沿った建築マネジメントの知識を伝える講習会や研究会も開催されています。

建築積算業務従事者に留まらず、幅広い層を対象とした内容のため、未経験者にとっても学びは多いと言えるでしょう。

出典:公益社団法人 日本建築積算協会 社会人教育

建築積算士以外の積算に関わる資格

建築積算士以外にも、日本建築積算士協会の認定資格として「建築積算士補」と「建築コスト管理士」があります。

概要と取得方法を以下にご紹介します。

建築積算士補

建築積算士補は、積算の基礎知識を有していることを認定する資格です。

建設コストや積算の知識・意識の浸透及び、取得者の建築積算士・建築コスト管理士へのキャリアアップを図る人材が増えることを期待して、2009年4月1日に創設されました。

認定校における建築積算講座を受講し、所定の単位を取得することで受験資格を得られます。

建築積算士補の資格所有者は建築分野の就職に有利になる可能性があります。

積算のスペシャリストへのキャリアアップを目指す意欲があると見なされるためです。

また、建築積算士の一次試験が免除され、二次試験の受験料が半額になる点もメリットです。

建築コスト管理士

建築コスト管理士は、積算業務の最上位資格です。

積算業務をさらに拡大させ、建築計画の構想から設計、施工、維持、保存、廃棄まで、建築物のライフサイクル全般においてコストマネジメントを行います。

2005年1月に設立され、2006年4月1日に新資格者が誕生しました。

以下のいずれかの条件を満たすと、受験資格を得られます。

(1)建築積算士の称号を取得後、更新登録を1回以上行った方
(2)建築関連業務を5年以上経験した方
(3)一級建築士に合格し登録した方

なお、過去年度の学科試験の合格基準点を超えた場合、次年度以降2年間学科試験が免除されます。

まとめ|積算業務に興味のある方はMACにご相談ください

積算業務は、建設工事に必要な費用を算出する重要な業務です。

建築分野の中でもホワイトカラーの業務であり「建築関係の仕事に就きたいけれど、現場仕事をする体力はない」という方にとっては一つの選択肢になります。

無資格でも積算業務に携わることはできますが、建築積算士の資格があるとより有利です。

建築積算士の資格試験は学歴や実務経験に関係なく受験可能で、合格率は6割程度と、建築士や施工管理技士と比較してやや高め。

日本建築積算士協会のガイドブックをしっかり読み込み、積算の知識を理解すれば、未経験者でも資格を取得できるでしょう。

積算業務に興味のある方は、ぜひMACにご相談ください。

建築分野の就職に関して、プロフェッショナルの立場からアドバイスいたします。

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