Construction column
発注者支援業務とは?仕事内容と必要な資格やスキルまで詳しく解説します
2022.12.09
「発注者支援業務」という言葉を聞いたことはありますか?施工管理や設計など、建設業界にはさまざまな業務がありますが、実は発注者支援業務は近年注目されている業務の1つです。
今回の記事では、発注者支援業務の仕事内容と必要な資格やスキルについて詳しく解説します。建設業界の仕事に興味がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
発注者支援業務の仕事内容
主に「発注者支援業務」「公物管理補助業務」「用地補償総合技術業務」の3つの業務をあわせて「発注者支援業務等」と呼びます。
ここからは「発注者支援業務等」の仕事内容について詳しく解説していきます。
発注者支援業務
発注者支援業務は「積算技術業務」「工事監督支援業務」「技術審査業務」と3つの業務があります。
積算技術業務は、発注者が工事予定価格を正しく算出できるように支援する業務です。
積算というとパソコンに向かって作業するというイメージがありますが、積算技術業務は現地調査から始まります。
次に、現地調査の結果から必要な工事発注用図面や数量総括表の作成をします。図面や数量に誤りがあると、工事予定価格に大きく影響するためミスがないか確認をしながら正確に作成しなければなりません。
最後に、積算資料を作成したり積算データを入力したりします。
工事監督支援業務は、発注者が工事の契約内容について履行確認をしたり工事受注者との協議をスムーズに進めたりするために支援する業務です。
発注者支援業務の中でも、工事監督支援業務はメインの業務といわれています。
工事監督支援業務では、請負工事の契約に必要な資料を作成したり、実際に建設工事の現場へ向かい施工状況確認や検査確認をしたりします。
設計図面と施工状況が合っているか、構造物の寸法や材料確認も重要です。設計変更がる場合は、設計変更協議用の資料を作成も行います。
ただし、工事請負会社の現場代理人や監理技術者などに指示すること、承諾を行うことはできません。
技術審査業務は、入札契約手続きにおける企業の技術力評価のために発注者を支援する業務です。
公告(公募)前に入札公告や入札説明書の案として工事発注資料を作成します。公告(公募)後は、工事を受注したい業者が工事入札参加をするために提出した施工計画や技術提案などの資料を確認します。
入札した業者の工事実績や技術者の資格などを整理した後、審査資料を作成して業務は完了です。
公物管理補助業務
公物管理補助業務は「河川巡視支援業務」「河川許認可審査支援業務」「ダム・排水機場管理支援業務」「道路巡回業務」「道路許認可審査・適正化指導業務」などを行います。
河川巡視支援業務は、河川区域・河川予定地・河川保全区域など管理する区域を定期的に巡視する業務です。
河川の状況を確認し把握することで、堤防・堰・水門などの河川管理施設に異常がないかを報告・記録します。
河川巡視を行う際は、専用のパトロールカーからの目視で行うのが基本ですが、状況によっては船舶で行う場合もあります。
河川許認可審査支援業務は、河川法に基づいた申請書類を受領し、書類整理・現地状況の確認・審査などを行う業務です。
河川現況台帳を記載したり修正したりするなどの書類を作成します。また、不法占用や放置車両などがないかを把握するために現地状況の確認も行います。
河川区域と民地の境界の調査のために現地立会を行うことも重要な業務です。
ダム・排水機場管理支援業務は、ダムや貯水池を管理するための監視や記録の作成・整理などを支援する業務です。堰や排水機場などの施設を監視し、点検や操作補助も行います。
ダムや排水機場の管理は治水事業において重要な業務です。そのため、日常管理だけではなく出水時のデータ観測や記録の作成も重要な業務であるといえます。
道路巡回業務は、道路や関連構造物を点検したり確認したりする業務です。道路の不正使用がないか、不法占用がないかも確認します。
道路許認可審査・適正化指導業務は、道路法に基づく申請書類を受領し審査や指導を行う業務です。
道路管理に関しての相談があった場合は、申立者と一緒に現地を確認することもあります。また、道路許認可に関係する図面や台帳などの整備も行います。
道路区域内で放置自転車や不許可看板などがないか、特殊車両が車両制限令に違反していないかなどの指導取締りも重要な業務です。
用地補償総合技術業務
用地補償総合技術業務は、権利者に対して用地交渉を行う業務です。
発注者に概要のヒアリングを行い、現地を調査・把握した後、権利者を特定します。公共用地を交渉するために方針を決定し、用地交渉を行うための資料を作成したり権利者に用地の交渉を行ったりします。
発注者支援業務と建設コンサルタントの違い
発注者支援業務は発注者(国)の立場で仕事をしていますが、建設コンサルタント業務に含まれています。
一方、建設コンサルタントは発注者(国)に対して設計を行い提案しています。発注者(国)と国民の間にいるのが特徴です。
ただし、建設コンサルタント全社が発注者支援業務を担当できるわけではありません。
実績がなければ入札に参加ができないため、実績のある建設コンサルタントのみ発注者支援業務を担当できます。
発注者支援業務に必要な資格・スキル
発注者支援業務を行うには、どのような資格やスキルが必要なのでしょうか。ここからは、発注者支援業務に必要な資格・スキルをご紹介します。
必要な資格
発注者支援業務を行う際、必要になる資格といえば「土木施工管理技士」です。
土木施工管理技士には「1級土木施工管理技士」「2級土木施工管理技士」の2つがあげられます。
1級土木施工管理といえば、建設現場で監理技術者や主任技術者になれる資格です。一方、2級土木施工管理技士は主任技術者になれる資格です。
発注者支援業務のメインの業務である工事監督業務では、建設現場にて施工状況確認や検査確認などを行います。
工事請負会社の現場代理人や監理技術者とコミュニケーションを取る必要があるため、1級土木施工管理技士の資格を持っていると業務を円滑に進められます。
2級土木施工管理技士の資格を持っている場合は、資料作成などの補助的な業務がメインです。
大規模な公共工事であれば1級土木施工管理技士の資格は必要になるため、資料作成などの実務を行い経験を積みながら1級土木施工管理技士の資格を目指しましょう。
他にも、技術士やRCCMなどの資格を取得することもおすすめです。
また、発注者支援業務ではコンクリート構造物に関わる機会も多いため、コンクリート主任技士やコンクリート診断士などを取得することで、より専門性を高められます。
必要なスキル
発注者支援業務に求められるスキルは「コミュニケーションスキル」「正確性」「CADの操作」などです。
建設工事は多くの人が関わっているため、コミュニケーションを取りながら仕事を進めていく必要があります。
発注者支援業務は、直接工事請負会社の現場代理人や監理技術者などに指示はできませんが、発注者や工事請負会社の担当者との日々打ち合わせを行います。
そのため、発注者支援業ではコミュニケーションスキルは必須です。
また、発注者支援業務は正確性も求められます。
発注者支援業務の工事監督業務では、工事請負会社が構築した構造物の検査確認を行います。
構造物が設計図書通りの寸法になっているか、適切な材料を使用しているかなどを確認しなければなりません。
細部にまで意識を向け品質管理に努める必要があるため、正確性は重要なスキルです。
設計段階から業務を行うことが多い発注者支援業務では、CADの操作スキルも必要です。
設計図書のほとんどはCADを使用して作成されているため、設計の修正や見直しの際もCADを操作しなければなりません。
さらに、国土交通省の場合はBIM/CIMの適用が拡大しています。今後は国土交通省以外の発注機関でもBIM/CIMで対応することが増えるでしょう。
CADの操作スキルに加えてBIM/CIMに関する知識や操作スキルもあわせて持っておくと、さらに業務の幅を広げられます。
発注者支援業務に向いている人
ここからは、発注者支援業務に向いている人について解説していきます。
施工管理経験がある人
施工管理経験がある人は、発注者支援業務に向いているといえます。
発注者支援業務を行う際、土木施工管理技士の資格が必要になることは多いです。発注者や工事請負業者と工事に関する打ち合わせを進める機会も多いため、施工管理経験があることで業務をスムーズに進められます。
もし、ゼネコンや建設会社で監理技術者や主任技術者の経験があれば、発注者支援業務でもこれまでの経験を生かして業務をできるようになります。
大規模な建設工事に関わりたい人
大きな建設工事に携わりたい人は、発注者支援業務に向いているといえます。
発注者支援業務では公共工事に関われるため、民間工事に比べて大規模な建設工事が多いです。道路・トンネル・ダム・橋梁・河川などの公共工事に関わりたい人にとってはやりがいのある仕事ができます。
「今よりももっと大きな建設工事に関わりたい」という方は、発注者支援業務で活躍してみるのもおすすめです。
まとめ
今回の記事では、発注者支援業務の仕事内容、必要な資格やスキルについて詳しく解説しました。
発注者支援業務と一口にいっても業務は幅広く、大規模な公共工事に関われるのも魅力といえるのではないでしょうか。
「大きな建設工事に携わりたい」とお考えの方は、ぜひ発注者支援業務に挑戦してみてはいかがでしょうか。