Construction column
技術士はどんな仕事?どうしたらなれるの?技術士の仕事内容から受験資格まで解説します!
2023.4.25
建築コンサルタントに必要な資格として耳にすることがある「技術士」。具体的には、どのような仕事をするのかご存知でしょうか?
このコラムでは、技術士が行う業務内容から受験資格までを解説します。建築コンサルタント会社で働いてみたい、技術士になりたいけど、仕事の具体的な内容を知りたいという方は、ぜひ参考にしてください。
目次
技術士とはどんな仕事なのか
技術士の仕事とはどのようなものなのでしょうか?ここからは、技術士の仕事内容や、「技術士補」との違いを解説します。
技術士とは
技術士とは、「科学技術に関する技術的専門知識と高等の専門的応用能力及び豊富な実務経験を有し、公益を確保するため、高い技術者倫理を備えた、優れた技術者の育成」を図るための国家資格です。
技術士の資格は、工学や建築、農業をはじめとした21の部門に分けられており、それぞれの分野における専門的な知識や技術を持つ技術者であることを認証するものとして知られています。
技術士は、産業界や研究機関、官公庁など幅広い分野で活躍することが可能で、その専門性が高く評価されている資格なのです。
技術士の仕事は、専門分野に応じて多岐に渡ります。主な業務は以下の通りです。
- 技術開発: 新しい技術等の開発に携わり、研究開発を推進。また、イノベーションを創出し、産業競争力の向上を促す。
- 技術指導: 従業員や後輩技術者への技術教育や指導を行い、技術力の向上、人材育成を支援する。
- 技術計画の策定: 企業等の技術戦略や計画を策定し、長期的な技術開発の方向性を決定する。
- 技術コンサルティング: 企業等に対し、技術的な問題解決や効率改善のための提案を行う。
- 技術評価・審査: 技術開発プロジェクトや製品の品質・性能評価、安全性審査などを行い、適切な技術基準を設定する。
また、技術士の資格を取得することで、その専門性が認めれることになるので、企業は当然のことながら官公庁などの信頼も高まることになるでしょう。
信頼性が高まることで、より大規模で高度なプロジェクトに携われる機会が増え、キャリアアップにつながることが期待できます。
このように、技術士は高度な専門的知識や技術をいかすことで、それぞれの分野において社会貢献を果たすことができるのです。
技術士補との違い
技術士と似たよう名前の資格として、技術士補があります。技術士と何か違いはあるのでしょうか。
技術士補とは、技術士試験の一次試験に合格し、公益社団法人日本技術士会に登録することによって取得する資格です。
簡単に言うと、技術士補とは技術士になるための「登竜門」と言っても良いかもしれません。
技術士補は技術士の補佐を行う役割を担い、将来、技術者となるための経験を積むことになります。
技術士補は技術士の指導のもと、以下のような経験を積むことになります。
- 基礎技術力の向上: 技術士補は、専門分野において技術力を身につけることが求められるため、現場での実務経験を積み、より高度な知識や技術力を習得する土台を築く。
- 現場での実践力養成: 技術士補は、現場での実務経験によって、技術的な問題解決や効率改善などの実践力を養う。
このように、技術士補は、自身の持つ専門分野における基礎的な知識と技術を、技術士の指導のもと、現場で実務経験を積むことで、より専門的で高度な知識、技術へと昇華させます。
技術士補は、将来、高度な専門的知識と技術を持つ技術士へと成長することを期待される立場と言っても良いでしょう。
技術士の受験資格と実務経験年数
技術士や技術士補についてご理解いただいたところで、ここからは、技術士になるための方法を解説します。
技術士になるためには、当然のことながら、技術士試験に合格しなくてはいけません。しかし、技術士になるためには、もう一つ、実務経験年数が問題となります。
受験資格に年齢制限はない
技術士になるためには、まず技術士第次一試験に合格する必要があります。
技術士補のところで説明した通り、技術士第一次試験は、技術士になるための第1段階の試験としての位置づけです。
大学のエンジニアリング過程(工学や農学、理学等)程度の内容の試験が出題されることになります。
技術士第一次試験は、年齢制限がありませんので、誰でも受験することが可能です。さらに、学歴や国籍、業務経歴等による制限もないため、多くに人に門戸が開かれている試験と言えるでしょう。
また、文部科学大臣が指定した教育課程である、JABEE認定プログラムの修了者は第一次試験が免除されます。
さらに、中小企業診断士の資格保有者や情報処理技術者合格者については、受験する部門によって専門科目が一部免除されるので、これらの資格保有者や合格者は、少しだけではありますが有利になると言えるでしょう。
試験合格者とJABEE認定プログラム修了者は、公益社団法人日本技術士会に登録の申請を行うことで、技術士補として登録することができます。
修習技術者としての実務経験が必要
技術士第一次試験に合格すると、すぐに第二次試験が受けられるわけではありません。第一次試験合格後、「修習技術者」として監督者や指導技術士のもとで、一定期間の実務経験を積む必要があります。
期間は、技術士補として登録した後、指導技術士のもとで修習する場合は4年、監督者の下で実務経験を積む場合は4年超、指導者がいない場合には7年の実務経験を積まなくてはいけません。
指導者のもとで技術経験を積む場合、修習技術者になってからの実務経験をもとに年数をはかることになります。
しかし、指導者がいない場合の実務経験年数については、修習技術者となる前の経験も年数に含むことができる点を押さえておいてください。
以上の期間、実務経験年数を積み、第二次試験に合格することで、技術士の資格を取得することになります。
技術士試験の合否基準と合格率
最後に、技術士試験の合否基準と合格率について見ていくことにします。
技術士試験の合否基準は、文部科学省により以下のように定めれています。
【第一次試験】
基礎科目、適正科目、専門科目において、それぞれ50%以上の得点。
【第二次試験・筆記試験】
各部門の必須科目、選択科目において、それぞれ60%以上の得点。
【第二次試験・高等試験】
各部門、それぞれ60%以上の得点。
また合格率は、第一次試験において、受験者数が17,225人、合格者は7,251人、合格率は42.1%と、50%を下回りました。
第二次試験においては、受験者数22,489人、合格者は2,632人、合格率は11.7%となっています。
上記の結果からも分かるように、技術士の試験は高度な専門知識と技術が必要となる試験ですので、難関試験だと言えるでしょう。
基礎的な知識と技術が問題となる第一次試験でさえ、合格率は50%を切ります。
しかし、だからこそ合格した後は、高い専門知識と技術に裏打ちされた信頼性を得ることができ、社会インフラの整備など、大きなプロジェクトにも参画できるのです。
まとめ
技術士は、その高度な専門的知識と技術によって、さまざまな分野で計画や設計、技術指導やコンサルティングを行うのはもちろん、イノベーションの創出など、大きな役割を担う存在です。
また、自身の事務所を持ち、グローバルな活躍も可能な資格だと言えるでしょう。まずは公共工事などの実績を積み上げ、建築コンサルタント会社で働いてみるのも一つの方法かもしれません。
高度な技術が求められる社会インフラ整備の仕事に携わってみたいという方には、「発注者支援業務」もおすすめです。
発注者支援業務に携わるためには、技術士などの資格が必要となるため、最適の仕事と言えるでしょう。
発注者支援業務は、国や都道府県などの自治体や、官公庁が発注する公共事業の発注業務をサポートする仕事です。
公務員と同じような年間休日や勤務時間など職場環境も整っており、安定的な仕事であることも魅力のひとつです。
国民の生活を支える社会基盤を作るためにも、発注者支援業務は重要な仕事ですので、技術士としての知識や技術をいかしてみてはいかがでしょうか。