Construction column
下請会社は主任技術者を設置しなくても良い?特定専門工事について徹底解説!
2023.6.30
建設業許可を取得した場合、工事の請負金額や下請・元請に関わらず、監理技術者を設置する場合を除いて、建設工事現場には主任技術者を設置しなくてはなりませんでした。
しかし、改正建設業法が2020年10月から施行されたことにより、一定未満の工事金額等の要件を満たす場合、主任技術者の設置をしなくても良くなりました。
その要件の中に組み込まれているのが「特定専門工事」です。
本コラムでは、特定専門工事とはどのようなものか、また主任技術者を設置しなくても良くなるケースを詳しく解説します。
この記事のポイント
- 特定専門工事について
- 下請会社の主任技術者を設置しなくても良いケース
- 主任技術者設置不要となる要件
目次
特定専門工事とは
特定専門工事とは、以下に当てはまる工事のことを言います。
- 土木・建築の一式工事以外である
- 施行技術か画一的である
- 施工管理技術の効率化を図る必要がある
これに加え、その⼯事を施⼯するための下請契約の請負代⾦の合計額が4,000万円未満(2023年1月1日から本金額に緩和されました)であることを満たす必要があります。
このように言われても、ピンとこないかもしれません。
簡潔に言えば、現状、特定専門工事とは「鉄筋工事」と「型枠工事」のことです。これは政令で定められています。
なぜ、鉄筋工事と型枠工事だけが特定専門工事と定められたのでしょうか。
鉄筋工事と型枠工事は、施行技術の面で作業場所に関わらず、同じような作業を連続で行いうことが背景にあるとされています。
特定専門工事における「施工管理技術の効率化を図る必要がある」とは、なるべく少ない人数で工事できるようにするという意味を持ち、人手不足の解消が目的です。
建設業者が苦労している、主任技術者の設置を緩和することも趣旨として含まれていると言えるでしょう。
下請会社の主任技術者を設置しなくても良いケース
下請け会社の主任技術者を設置しなくても良いケースには、大まかに3つのケースがあります。
まず、1次下請会社が、「一定の指導監督的な実務経験を有し、かつ、当該工事で専任で置かれる者」である主任技術者を設置する場合です。
この場合は、それ以降の2次下請会社は主任技術者を設置する必要はありません。
次に、元請会社の主任技術者が一括で施工管理を行う場合です。
元請会社が主任技術者を設置するので、以降の1次下請会社や2次下請会社は主任技術者を設置しなくてもかまいません。
最後に、2次下請会社の主任技術者が一括して管理する場合です。
この場合は、2次下請け会社が主任技術者を設置するので、それ以降の3次下請会社は主任技術者を設置する必要はありません。
この制度は、元請負人の立場においては、自社の施工分を超えた業務量に対応しやすくなるというメリットがあり、下請負人としては受注機会の確保がしやすくなるというメリットが存在します。
この制度については、建設業法第26条の3に定められていますので、確認しておくと良いでしょう。
また、500万円未満の軽微な建設工事や、1,500万円未満又は延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事などの建築一式工事でも、主任技術者の設置は不要です。
ただし、この場合は請け負う建設業者が「建設業許可を取得していない」という条件がつきます。
建設業法では、「建設業者は、請け負った建設工事を施工するときは、当該建設工事に関する主任技術者を置かなければならない」と定めています。
つまり、この条文は建設業許可を取得した建設業者に当てはまるものです。
そのため、建設業許可を取得していない建設業者の場合には、500万円未満の軽微な建設工事や、1,500万円未満又は延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事などの建築一式工事において、主任技術者を設置しなくても良いと考えられるのです。
主任技術者設置不要となる5つの要件
人材不足により、主任技術者の設置は建設業者にとって課題の一つでした。
その主任技術者の設置を緩和し、人材不足解消の意図がある改正建設業法は、建設業者の課題解決の一手段となり得るものです。
ここでは、主任技術者設置が不要となる場合に満たすべき5つの要件を解説します。
特定専門工事である
特定専門工事であることは、主任技術者設置が不要となる要件です。
上述の通り、特定専門工事とは「土木一式工事又は建築一式工事以外の建設工事のうち、その施工技術が画一的であり、かつ、その施工の技術上の管理の効率化を図る必要があるものとして政令で定めるもの」のことを言います。
現在、政令で定められている特定専門工事は「鉄筋工事」と「型枠工事」の2つです。
下請契約の請負代金額が政令で定める金額未満
次に必要となる要件は、元請負⼈が当該⼯事を施⼯するために交わした下請契約の請負代⾦が政令で定める金額未満であることです。
2022年までは、政令で定める金額は3,500万円未満とされていましたが、2023年1月1日から4,000万円に緩和されています。
この金額については、「下請契約の請負代金の額(当該下請契約が二以上あるときは、それらの請負代金の額の総額。以下この項において同じ。)が政令で定める金額未満」とされています。
つまり、工事が2つ以上ある場合には、2つの下請契約の請負代金の合計が4,000万円未満でなくてはいけません。
書面で合意がなされている
工事を注文を行う元請会社や1次下請会社と、工事を請け負う1次下請会社や2次下請会社などの間で書面において合意を行う必要があります。
その書面では、以下の事項の記載が必要です。
- 特定専門工事の内容
- 上位下請の置く主任技術者の氏名
- 当該特定専門工事に係る下請契約の請負代金の額
- その他に当該特定専門工事に係る下請契約がある場合は、それらの請負代金の額の総額
特定専門工事の内容については、上述の通り「鉄筋工事」か「型枠工事」のどちらかになります。
上位下請の置く主任技術者の氏名については、本工事についての施工管理を行う者になりますので、記載が必要です。
下請契約の請負代金の額の記載が必要となるのは、下請契約の請負代金の合計金額が4,000万円未満であることを証明するためです。
同様に、その他の当該特定専門工事に係る下請契約がある場合も、合計した請負代金金額が4,000万円を下回ることを明らかにするために記載します。
書面による合意については、注意が必要なことが1点だけあります。
それは、元請会社であれば発注者、1次下請会社であれば元請会社というように、注文者の承諾が必要な点です。
この注文者の承諾についても、書面で行う必要があります。
元請会社・下請会社の主任技術者が一定の要件を満たしている
特定専門工事において、主任技術者の設置しなくても良いとされるためには、元請会社や下請会社が設置する主任技術者が以下の条件を満たしている必要があります。
- 当該特定専門工事と同一の種類の建設工事に関し一年以上指導監督的な実務の経験を有すること
- 当該特定専門工事の工事現場に専任で置かれること
上記の条件を満たしていない場合には、工事を請け負った会社ごとに主任技術者の設置が必要となりますので、注意が必要です。
再下請負をしない
上記の条件を満たした上で、主任技術者を設置しないことを決めた下請会社が、その下請負に関する工事を他の会社などに請け負わせること(再下請負)はできませんので、注意してください。
もし、これに反し、当該工事において主任技術者を設置しないと決めた下請会社が、他の会社に再下請負を行った場合には、監督処分の対象となります。
ただし、これは本制度を利用している会社において適用されます。
本制度を利用していない、つまり主任技術者を設置している下請会社については、再下請負契約を行い、工事を他の会社に任せることは可能です。
まとめ
深刻な人材不足が叫ばれる建設業界にとって、主任技術者を設置することも大変な場合があります。
そこで導入されたのが、特定専門工事において、一定の要件を満たせば主任技術者の設置しなくても良いという制度が採用されました。
要件を全て満たさなくてはいけない点や、工事が「鉄筋工事」と「型枠工事」に限られていることもあり、活用できる業者は少ないかもしれません。
しかし、今後は特定専門工事が増えてくる可能性もあり、発注者支援業務にも関わってきますので注目が集まる制度です。
発注者支援業務は、国や都道府県などの自治体や、官公庁などが発注する公共事業の発注業務をサポートする仕事です。
公務員と同じような年間休日や勤務時間など職場環境も整っており、安定的な仕事であることも魅力のひとつでしょう。
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