Construction column
もうすぐインボイス制度が開始!建設業者に与える影響やこれだけは注意しておくべき点を解説
2023.7.29
いよいよ2023年10月からインボイス制度が開始されます。
インボイス制度は、さまざまな業界において影響を与えるとされていますが、建設業においても対応が求められる制度です。
建設業では、一人親方や手間請けなど免責事業者へ仕事を発注することが多いためです。
本コラムでは、インボイス制度が建設業者に与える影響や注意点について解説します。
目次
そもそもインボイス制度とは
インボイス制度は新しい仕入税額控除の制度で、正式名称は「適格請求書等保存方式」と言います。
消費税の軽減税率が導入されたことにより、仕入税額に8%と10%が混在しているため、「区分記載請求書等保存方式」が採用されているのが現状です。
しかし、正確な消費税額と消費税率を把握することで、正しい納税額を計算することを目的にインボイス制度が導入されます。
インボイス制度が開始される2023年10月1日以降に仕入税額控除を受けようと考えた場合、課税事業者は、現在よりも細かい記載事項や制限のある「適格請求書(インボイス)」を保存しなくてはいけません。
適格請求書は国税庁から登録承認を受けた「適格請求書発行事業者」だけが発行可能です。
インボイ制度が開始された際に、適格請求書を発行するためには事前に登録申請を行う必要がありますので注意してください。
インボイス制度が建設業者に与える影響
インボイス制度は、建設業者に大きな影響を与えると言われています。
その理由は、建設業は企業間の取引が多く、一人親方など免責事業者への発注が大きな比率を占めているためです。
ここからは、インボイス制度が建設業に与える影響について詳しくみていきましょう。
課税事業者はインボイス発行事業者への登録が必要になる
先ほど述べた通り、適格請求書を発行するためには課税事業者でなくてはいけません。なおかつ、適格請求書発行事業者の登録が必要です。
自社が課税事業者であったとしても、適格請求書発行事業者の登録を忘れていた場合、取引相手は仕入税額控除が利用できません。そのため、納税額負担が増加することになります。
取引相手の納税額負担が増加するということは、取引継続の有無が見直される可能性が出てくるでしょう。
また、自社が免責事業者である場合には、適格請求書が発行できなくなります。
発注先から仕事を受けるためには、課税事業者になり、適格請求書発行事業者の登録が必要になるでしょう。ただし、これらの対応は強制ではなく任意のため、最終的には経営判断になります。
免責事業者(一人親方など)の取引減少や取引停止の恐れがある
免責事業者とは、所定期間内の課税売上高が1,000万円に満たない事業者のことです。建設業においては、一人親方や手間請けを行ってる業者の多くが該当するでしょう。
取引相手は、免責事業者と取引をしても仕入税額控除が受けられず、納税額が増加してしまいます。
また、適格請求書とは別に処理や管理を行わなければならないなど、多くの工数が発生するため手間がかかってしまいます。
これらの理由から、免責事業者においては取引が減少したり、取引停止となる事業者が増加する可能性が考えられるのです。
免責事業者から課税事業者となる事業者が増える
国税庁は2020年、消費税を申告した32万の事業者に適格請求書発行事業者へ登録することを促す通知を行いました。
このような背景から、インボイス制度の開始に合わせ、適格請求書発行事業者に登録する課税事業者が増加すると予測されています。
適格請求書発行事業者が大きく増加した場合、免責事業者も課税事業者にならざるを得なくなると考えられます。
前述の通り、建設業界においては一人親方など免責事業者が多く、現状では適格請求書を発行できないため、仕入税額控除を受けることができません。
このため、取引が減少したり、最悪の場合には取引停止も考えられるため、免責事業者である一人親方などが課税事業者になることが増加すると考えられます。
偽装請負が減少する
現状、建設業界を悩ませている深刻な問題として、一人親方などによる「偽装請負」があります。
偽装請負とは、雇用している従業員に対して発生する雇用保険料の負担を回避するため、従業員を一人親方として独立させ、業務請負契約を結ぶものです。
この結果、業務の負担は社員として雇用している場合と変化はありませんが、個人事業主である一人親方のため、社会保険料や残業代、福利厚生などを削減できていました。
しかし、インボイス制度が始まることにより、偽装請負を行っている一人親方は減少する可能性が高くなると予測されています。
建設業者がインボイス制度で押さえておきたい注意点3選
インボイス制度が開始された場合、建設業にどのような影響が出てくるのかを解説させていただきました。
これらの影響が出ることを踏まえた上で、建設業者がインボイス制度開始後における注意点を解説します。
取引先が適格請求書発行事業者か事前に確認する
インボイス制度が開始されると、仕入額控除を受けるには適格請求書発行事業者が発行する適格請求書を保存しなくてはいけません。
繰り返しになりますが、建設業界においては免責事業者である一人親方などへ仕事を発注することが大きな割合を占めています。
そのため、仕事を発注する一人親方などが適格請求書発行業者でない場合、適格請求書を受け取れないため、仕入税額控除が受けられず税負担が増えます。
インボイス制度開始後、仕事を発注する際には事前に取引相手が適格請求書発行事業者なのか、免責事業者なのかを確認しましょう。
課税事業者や適格請求書発行事業者への登録を促す際は慎重にする
仕入税額控除を利用したいと考えている場合、取引相手が適格請求書発行事業者でなくてはいけません。
取引相手が免責事業者である場合には、課税事業者や適格請求書発行事業者に登録を促したくなるのではないでしょうか。
しかし、免責事業者に課税事業者や適格請求書発行事業者への登録を促す場合には注意が必要です。
免責事業者は建設業法や下請法によって保護されています。そのため、強引に課税事業者や適正請求書発行事業者へ登録するように要請することは、下請法や独占禁止法に違反する可能性があるので注意が必要です。
免責事業者に課税事業者や適格請求書発行事業者への登録を促す際には、強引な要請をしないようにしましょう。
免税事業者へ仕事を発注する場合はコストが増加する
インボイス制度が開始されると、取引相手が免責事業者であった場合、適格請求書が発行されませんので、仕入税額控除が受けられずコストが増加します。
また、適格請求書発行事業者は仕入税額控除の対象、免責事業者は仕入税額控除の対象外と分けて事務処理を行わなくてはいけません。
このように、免責事業者へ仕事を発注した場合には、事務処理を別に行う必要が出てくるため、手間やコストが増加することが考えられます。
まとめ
インボイス制度開始まで3ヶ月を切りました。建設業においても、インボイス制度は大きな影響を与えることが予想されています。
建設業界において発注先の大部分を占める一人親方などは、多くの場合、免責事業者である可能性が高いです。
免責事業者へ仕事を発注する場合、仕入税額控除が受けられないためコストが増加してしまいます。
ただし、インボイス制度が開始されたからといって、すぐに仕入額控除が全額受けられなくなる訳ではありません。
インボイス制度開始から6年間は経過措置が取られることになっています。
この期間で、取引相手としっかりと話し合い、適格請求書発行業者に登録してもらうのか、免責事業者のまま仕事を行うのかの取り決めを行うようにしましょう。
インボイス制度で大きな影響を受ける言われている建設業界で、公共工事において活躍することができる仕事に発注者支援業務があります。
国や都道府県などの自治体や、官公庁などが発注する公共事業の発注業務をサポートする仕事です。
公務員と同じような年間休日や勤務時間など職場環境も整っており、安定的な仕事であることも魅力のひとつでしょう。
興味がある方は、国民の生活を支えるインフラ整備に関われる「発注者支援業務」の仕事に携わってみませんか。