Construction column
猶予期間もいよいよ終了間近に!改めて電子帳簿保存法を理解しておきましょう!
2023.7.30
電子帳簿保存法をご存知でしょうか?電子帳簿保存法は1998年に施行され、2022年に大改正が行われました。
本改正によって、電子取引データを紙で保存することが原則、できなくなりました。
これにより、さまざまな業界に影響が出るであろう電子帳簿保存法は、建設業界にも大きな影響を受けることが予想されます。
本記事では、2022年に改正された電子帳簿保存法の改正ポイントや建設業界への影響、メリットを解説します。
目次
電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法を簡単に言い表すと、「国税関係帳簿書類や帳簿、請求書、領収書などを電子データで保存することを認めた法律」です。
本来、国税関係帳簿書類などは紙での保存が義務付けられていました。
しかし、コロナ禍の中でテレワーク等の普及により、紙でやり取りする業務の非効率的な側面が露見します。
そこで、2021年から2022年にかけて電子データの取り扱い、保存について見直しが行われたのです。
電子帳簿保存法が成立したことにより、ペーパーレス化が進み、事務担当者の負担軽減や紙保管のスペース、コストの削減が図られました。
1998年に施行された電子帳簿保存法の2022年に行われた大改正は、時代に即したアップデートというよりは、国が中心となってペーパーレス化やDXの推進する内容となりました。
本法律は2022年1月に施行されていますが、2年間の猶予期間(宥恕処置)が設定されています。
本格的な施行は2024年1月からとなるため、各業界の事業者には早めの対応が求められています。
2022年電子帳簿保存法の改正ポイント
2022年、電子帳簿保存法は大きな改正が行われました。一体、どういった点が大改正だと評価されているのでしょうか?
2022年改正の大きなポイントは以下の3点です。
- 電子帳簿保存
- スキャナ保存
- 電子取引データ保存
以下の項目で、それぞれについて解説します。
電子帳簿保存
2022年に改正された電子帳簿保存法では、会計ソフトなどを利用して作成した帳簿や電子的に作成した国税関係書類(請求書や領収書など)があれば、そのデータをそのまま保存し、紙の帳簿に代替できることが定められました。
また、これまでは保存しようとする3ヶ月前までに税務署に届け出て、税務署長の事前承認を受ける必要がありましたが、改正後はこれが廃止されています。
改正前の電子帳簿保存法では、検索要件が電子帳簿や電子書類ごとに設定されていた上、範囲指定検索や組み合わせ検索に対応する必要があるなど、複雑になっていました。
しかし、改正後には検索要件が「取引年月日・金額・取引先」のみの設定となり、複雑な設定を行わずに済むようになったことで、事務業務の負担が取り除かれています。
さらに、税務職員からのダウンロード要請に応じられる場合には、範囲指定検索や組み合わせ検索の機能についても不要とされ、電子帳簿等の保存に関する要件緩和が行われました。
スキャナ保存
電子帳簿保存法では、取引先から受け取った紙の書類に関して、解像度200dpi以上でのスキャナ保存、デジタルカメラやスマートフォンで撮影した画像データでの保存が可能です。
改正によって、スキャナ保存に関しても税務署の事前承認が不要となり、検索要件が緩和されています。
スキャナ保存においては、タイムスタンプの要件の緩和が大きな改正と言えるでしょう。
従来、スキャナ保存を行う場合は遅滞なくタイムスタンプを押す必要があり、受領者の署名が必要でした。
しかし、改正後は保存の期間が2ヶ月とおおむね7営業日(約70日)以内に伸び、受領者の署名も必要なくなりました。
電子取引データ保存
本改正において、多くの事業者が関心を寄せているのが電子取引に関する改正ではないでしょうか。
具体的には、クラウドやアプリ、EDI(電子データ交換)、USBメモリ、メールを利用した注文書や契約書、送り状、領収書などの書類のやり取りが大きく変化します。
従来の電子帳簿保存法では、電子取引データの保存について以下の3つから選択することが可能でした。
- 電子データ
- 電子計算機出力マイクロフィルム(COM)
- 紙の書面
しかし、本改正により猶予期間が終わった後は、電子データによる保存が義務付けられます。
また、電子取引データ保存に関しても、タイムスタンプの要件が緩和されています。
建設業界への影響とメリット
2022年の電子帳簿保存法改正は、多くの業界に影響を与えることが予測されているため、今後、早急な対応が求めらるでしょう。
それでは、本改正が建設業界に与える影響にはどのようなものが考えられるのでしょうか。
ここからは、その影響やメリットについて解説します。
ペーパーレス化によってコスト削減が期待される
各種書類を電子データで保存するようになることで、紙に出力して保存する必要がなくなります。
紙での保存にはインクや用紙など、印刷にかかるコストが発生しまいたが、電子データで保存することでコスト削減が可能です。
また、紙に出力した書類はファイルに綴って管理したり、保管するためのスペースを確保する必要がありました。
電子データで保存することにより、管理する手間や保管のための場所が必要なくなるため、業務の負担軽減、省スペースによる費用削減にもつながるでしょう。
データ管理の効率化につながる
各種書類を電子データとして保存することによって、データ管理が効率的に行えるようになります。
紙で保存している書類は、保管場所に行く手間や探す手間がかかり、効率が非常に悪かった言えるでしょう。
電子データとして保存しておくことで、検索をかけることで必要な時に、簡単に探すことができるので、紙の書類のように手間や時間をかけることは必要なくなります。
また、機密情報などもデータで保存することになりますので、定期的なバックアップを行っておけば紛失する恐れもなくなります。
電子データとして保存することで、紛失や火事による消失を防ぎ、経年劣化による文字の消失も防ぐことが可能です。
印紙税やタイムスタンプが不要になる
契約書を締結する際、紙で行う場合には取引額に応じた印紙を貼る必要があります。
建設業では、工事規模が大きくなればなるほど、印紙代は高くなり、事業者に大きな負担となっていました。
契約書を電子データで取り交わすようになった場合、印紙税の負担がなくなります。
これは、印紙税が文書課税となっているため、電子データで作成した場合には不要となるとされているからです(2005年(平成17年)の国会答弁の答弁書による)。
これによって、建設事業者はこれまで契約時に必要となっていた印紙税の負担が軽減されます。
また、書類のスキャナ保存について、従来はタイムスタンプが必要とされていました。
しかし、本改正によって、訂正や削除履歴が残るクラウドシステムに保存する場合、タイムスタンプ自体が不要になったため、業務効率化がより一層促進されると考えられています。
まとめ
電子帳簿保存法の改正により、建設業界にも大きな影響が出ることが確実視されています。
しかし、この影響は業務効率化やコスト削減につながるため、大きなメリットになると考えられています。
2023年12月末をもって、電子帳簿保存法の猶予期間が終了することは確定事項です。
まだ対応しきれていない場合、青色申告の承認取り消しや追徴課税や推計課税を課される、会社法により過料が科せられる場合もあるなど、事業者にとって不利になる場合もありますので、なるべく早急に対応することをおすすめします。
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