Construction column
発注者支援業務の業種は何になるの?建設業ではない?建設コンサルタントじゃないの?公務員と同じ?さまざまな疑問にお答えします!
2023.8.31
「発注者支援業務」という仕事をご存知でしょうか?建設業界に身を置いていないと、想像もつかないかもしれません。
そこで疑問として出てくるのは「発注者支援業務の職種は何になるのか?」という点ではないでしょうか。
公共工事に関わるので「建設業」と考える方もいるでしょうし、詳しい方であれば「建設コンサルタタント業」や「みなし公務員」と考える方もいるでしょう。
本コラムでは、発注者支援業務と建設業、建設コンサルタント業の関わり、みなし公務員について解説します。
目次
発注者支援業務の業務内容
発注者支援業務は、公共工事を発注者となる国や地方公共団体、官公庁等の発注業務をサポートする仕事です。
具体的には、発注者が用意する事業計画立案に関する資料の作成や、数量計算書をもとにして予算書をを作成したり(積算支援)、建築基準や品質基準をチェック・管理します。
また、発注者の立場から建設現場の監督を支援したり(工事監督支援)、公共用地交渉用資料を作成し、権利者に用地交渉をする(用地補償総合技術業務)等も発注者支援業務です。
ただし、業務内容は発注者によって異なりますので、必ずこれらの業務すべてを行うわけではありません。
発注者支援業務は建設業なの?
発注者支援業務は、公共工事に携わる業務を担うため建設業に分類されるのではないかと思われることがあります。確かに、発注者支援業務の内容を見てみると建設業であると考えてしまうことでしょう。
しかし、発注者支援業務はあくまでも発注者側から公共工事に携わることになります。確かに、発注者支援業務は施工管理などのサポート業務を行うことはあります。しかし、受注者として構造物をつくることはありません。
建設業は建設法上、土木一式工事業や建築一式工事業を始めとする29種類に分類されています。発注者支援業務は建設法上の分類に含まれておらず、業種としては建設業には含まれていません。
建設コンサルタントとは
建設コンサルタントは、国が設立して管理・維持を行う社会インフラ(ダムや河川、道路、橋等)を整備するために、調査、計画、設計、施工監理、維持管理などのコンサルティングを行う仕事です。
例えば、新たに道路を建設する際には、地形や交通量、周辺環境などを調査して、最適な場所と設計を決定し、工事の進行のチェックや、完成後の維持管理も建設コンサルタントが行います。
このように、建設コンサルタントはインフラ全般に関してプロデュースやアドバイスを行い、クライアントをサポートする業務を担っています。
建設コンサルタントの仕事
先に述べたように、建設コンサルタントは工事に開始にあたって必要な調査、計画、測量、補償、設計、施工管理、維持管理などを担います。
建設コンサルタントの仕事内容をまとめると以下の通りです。
調査・測量:事業の概要を把握するため、現地の地形や気候、交通量、環境保全に関する測 量及び調査を行う。
補償:当該工事の対象となる用地を確保(買収)する。
計画:調査や測量に基づき、事業の目的や目標、スケジュール、予算などの事業概要を策定 する。
設計:計画に基づいて、施設の構造や仕様などを決め、図面(設計図)を作成する。
施工管理:建設工事の進行をチェックし、設計通りに工事が進むように管理する。
維持管理:完成した構造物が安全に機能するように、定期点検や修繕を行う。
建設コンサルタントの仕事の流れ
建設コンサルタントの仕事の流れも、ここで押さえておきましょう。
建設コンサルタントは、国や地方公共団体、官公庁等から「発注」された業務を「受注」し、「契約」を締結します。現地調査を行い、「基本事項検討」した後、発注者と「打合せ」行います。
この過程を経て、「設計・解析・分析及び計画立案・図面作成」を行うのです。これらの業務を行う際にも、綿密な打ち合わせを行います。
これらの打合せ結果などを踏まえ、最終的に報告書や図面をとりまとめ、「成果」として発注者へ提出して承認を受けた後に「納品」し完了です。
発注者支援業務と建設コンサルタントとの関係
建設コンサルタントの仕事についてご理解いただけたと思います。しかし、発注者支援業務とどのような関係があるのか疑問に思った方もおられるのではないでしょうか。
実のところ、発注者支援業務を行っているのは建設コンサルタント会社なのです。発注者支援業務は建設コンサルタント業務のひとつとして、建設コンサルタント事業として分類されています。
つまり、ここで結論を述べてしまうと、発注者支援業務の業種は建設コンサルタントと同じとなるのです。ちなみに、建設コンサルタント業は「学術研究, 専門・技術サービス業」となります。
発注者支援業務は建設コンサルタントと同じ業種ではありますが、スタンスに違いがあります。発注者支援業務は発注者側のスタンスで業務を行い、建設コンサルタントは国と国民の中立的なスタンスで、社会インフラ設計の提案を行っています。
また、すべての建設コンサルタントが発注者支援業務を行えるわけではないことに注意が必要です。建設コンサルタントが発注者支援業務を行うには、業務受注のための入札に参加できる実績と体制が必要になります。
みなし公務員とは
発注者支援業務は公務員の職務を代行し、公益性・公共性があることから「みなし公務員」とされています。実際には公務員でありませんが、公務員と同じような規定が設けられており、公務員とほとんど変わらないと言えるでしょう。
ここでは、みなし公務員がどのようなものかを解説します。
みなし公務員の定義
みなし公務員とは、どのようなものなのでしょうか。その定義から解説していきましょう。
みなし公務員を簡単に説明すれば、「民間企業に所属しながら公共性・公益性の高い職業に従事している人」です。携わる仕事に公共性や公益性があるため、公務員ではありませんが、公務員と同様に扱われます。
みなし公務員は、公務員と働き方が似ていることや、守秘義務があること、担う役割が似ていること、事業の安定性があります。そのため、みなし公務員として働く職員は、公務員と同じような扱いや待遇を受けることが可能なのです。
公務員と同じ扱いを受けるため、公務員方の一部が適用されたり、刑法の適用についても公務員と同じ扱いを受けたり、罰則についても刑法が適用されることに注意してください。
みなし公務員の種類
みなし公務員とされている職業にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、その具体例を紹介します。
- 日本郵便職員
- 国立大学職員
- 日本銀行役職員
- 日本年金機構役職員
- 駐車監視員
- 日本司法支援センター役職員
- 公共インフラ系職員
この他、通信会社職員や公立図書館職員などもみなし公務員です。おおまかに言うならば、「公共サービス」に関わる仕事をしている人は、みなし公務員といえるでしょう。その点から考えるならば、発注者支援業務に携わる人は、みなし公務員といえます。
発注者支援業務は労働環境が整った業種です!
発注者支援業務は国民の生活を支える基盤となる、社会インフラを整備する大事な仕事です。その業種は、専門的な技術のサービスを提供するものといえます。
公共工事に関わることから、建設業と同様のものと考える方もいるため、長時間労働や休日取得が難しいものと思っているかもしれません。
しかし、発注者支援業務は建設コンサルタント業務のひとつであり、働く場所は国や地方公共団体、官公庁等の事務所内です。つまり公務員と同じ職場で働くことになり、身分もみなし公務員という立場になるため、厳しい残業はないといえるでしょう。
つまり、公務員と同じような年間休日、勤務時間であるなど、労働環境は整備されています。
公共工事という、国民生活になくてはならない社会インフラ整備の仕事を経験してみたいと考えている方は、発注者支援業務にチャレンジしてみることをおすすめします。