建設業界は「新3K」で変わることができるのか!?建設業界で注目の新3Kとは?
建設業界と言えば従来、「きつい」「汚い」「危険」という3つの言葉がセットになり「3K」と呼ばれ、人材確保の障壁となっていました。
そこで、人材不足を解消し、新しい担い手の確保を目的に、従来の「3K」のイメージを払拭し、「新3K」を打ち出すことで業界のイメージを変えようとする動きが出ています。
本コラムでは、建設業界のイメージ払拭の鍵になると考えられている「新3K」について解説します。
目次
建設業界で注目の「新3K」とは
従来の建設業界にある「きつい」「汚い」「危険」という「3K」のイメージが、業界の人材不足を深刻なものにしていたと言っても過言ではないでしょう。
そこで、建設業界の「3K」のイメージを払拭しようと打ち出されたのが「新3K」という考えです。
この「新3K」の実現に向けて、国土交通省はさまざまな取り組みを推進しており、建設業界の人材不足解消に向けて積極的な姿勢を示しています。
国土交通省が示した「新3K」は「給与」「休暇」「希望」です。ここでは、それぞれについて解説します。
新3K① 給与
建設業界は一般的に、給与の平均値が他業種と比べて高い水準にあることは有名です。そのため、建設業は「稼ぎやすい業界」と紹介されることがあります。
しかし、これは大手ゼネコンや設計事務所の社員、建設会社の経営者などが平均給与を押し上げているからです。
下請けを中心に仕事を請け負っている中小建設業者の場合、管理職に就いていても平均年収以下というケースは少なくありません。
このような状況を受けて、日本建設業連合会(日建連)は2018年、「労務費見積り尊重宣言」を行います。
国土交通省も本宣言を踏まえ、公共工事で下請けから提出された見積りを尊重する企業の評価を優位にするなどの新たな取り組みを始めています。
また、建設業界では就業者の給料が月給制ではなく、日給制であるという問題も考えなくてはいけません。
日給制では病気で休んだ場合だけでなく、台風などの自然災害で仕事を休んだ場合でも、収入は減少してしまいます。
建設業界にも月給制を導入することで収入が安定し、病気や自然災害などによる収入減少という不安を払拭することができるでしょう。
新3K② 休暇
建設業における問題として、最も大きいとされているのが労働時間の長さや休暇を確保することの難しさです。
建設業界では工期の遅れなどが発生すると、長時間労働や休みを返上して働かざるを得ない状況が続いていました。
このような問題を解決するため、国は2020年3月に「適正な工期設定に関する指針」を策定し、公表しています。
本指針では、具体的施工実日数や準備・片付けに要する期間、休日などの考慮、余裕期間制度の原則活用などが盛り込まれています。
国の直轄工事に関しては、週休2日を確保できるような工期設定、経費補正する取り組みを行い、地道に進展させています。
週休2日を確保しているかどうかに応じ、労務費等を補正することと合わせて、成績評定を加減点する「週休2日対象工事」の発注も開始されました。
さらに、2024年4月からは、時間外労働の上限規制が罰則付きで適用されるため、建設業界においても、計画的に環境を整えていく必要があります。
これらの取り組みにより、建設業界の長時間労働、休暇が取りにくいというイメージの改善が図られていくでしょう。
新3K③ 希望
この「希望」の項目には、建設業界を「希望が持てる魅力的な業界にしたい」という思いが込められています。
建設業界における最大の問題点であり、将来に対して希望を持てない状況にしてしまっているのは「人手不足」です。
働き手の確保と定着、作業効率をアップさせて生産性の向上を図ることが、人手不足解消の方法ではないでしょうか。
そこで進められているのが、「i-Construction」です。具体的には、現場におけるICT(情報通信技術)の活用があげられます。
ドローン技術を活用した3次元測量や3次元測量データによる設計・施工計画、検査業務の効率化、重機の遠隔操作、5G技術を用いた無人施工などが行われています。
ICTを活用することで、作業効率をアップさせられるだけでなく、省人化や安全性の向上につながるでしょう。
作業効率が上がれば、現場を少ない人数で回すこともできるため、労働時間の短縮、休日の取得がしやすくなり、働き手の確保と定着化が進むと考えられます。
人手不足の解消により、建設業界の未来に希望が持てるようになれば、魅力的な業界となり、さらに働き手が増えていくという好循環を生み出すことができるのではないでしょうか。
なぜ「新3K」が注目を集めているのか
建設業界のイメージを払拭するために提案された「新3K」ですが、なぜ注目を集めているのでしょうか。
ここでは、「新3K」が注目を集める理由を解説します。
建設業従事者の高齢化
「新3K」が建設業界で注目を集めるのは、やはり業界全体の問題である人手不足のためです。
特に、建設業界では働き手の高齢化が顕著になり、問題となっています。
国土交通省が令和3年10月15日に公開した「最近の建設業を巡る状況について【報告】」によれば、建設業従事者の約36%が55歳以上に対し、29歳未満が約12%となっており、高齢化が進んでいます。
高齢の作業員が退職することで就業人数が減少し、さらなる人手不足が懸念されるだけでなく、技術の継承という視点においても大きな問題です。
若者離れ
上述のとおり、建設業界では29歳以下の若者の数が約12%(全業界では約17%)と少なくなっています。
厚生労働省が公表している「建設労働者を取り巻く状況について」においては、平成26年3月に卒業した新卒者が建設業界へ就職した割合は全産業への就職者数の5.8%と低い数値です。
若者が建設業界に就職してこなくなれば、必然的に業界の高齢化が進んでしまい、人手不足が加速していくことになります。
若者の離職率の高さ
若者離れの際に見ていただいた「建設労働者を取り巻く状況について」では、さらに若者の離職率の高さも見てとることが可能です。
建設業界では、新卒者の3年以内の離職率は製造業と比べると高い傾向にあります。平成23年3月の卒業者については、高卒者で約1.8倍、大卒者で約1.6倍です。
若者離れが叫ばれる中、せっかく建設業界に入ってくれた若者が早い段階で離職してしまうのは業界にとって大きなダメージと言えるでしょう。
このような、建設従事者の高齢化や若者離れという、業界全体の問題を解決するための方法として「新3K」は注目を集めているのです。
「新3K」を実現するためには
建設業界では、本格的に人手不足の問題解決に当たるため、一丸となって「新3K」の取り組みを推進しています。
特に、建設キャリアアップシステムの普及推進は「新3K」に欠かせないとされています。
業界全体の「見える化」が行われることによって、建設業従事者が適切な扱いを受けることができるからです。
また、2024年度からは、原則的に月45時間、年360時間の時間外労働に対する上限規制が適用されるようになるため、労働環境の整備が必要となります。
このように、「新3K」を実現するためには、人材確保と定着化を容易にするための環境整備が急務です。各企業が、そのことを意識し積極的に対応していくことが必要となります。
まとめ
従来の「3K」は、長らく建設業界のイメージを傷付けていました。しかし、現在、そのイメージを払拭するために建設業界は一丸となって、労働環境の整備に取り組んでいます。
その中で登場したのが「新3K」という考え方です。慢性的に人材不足に悩む建設業界にとって、人材の確保と定着を図ることは喫緊の課題でしょう。
その課題を解決するために、「給与」の適正化、長時間労働の解消と「休暇」の取得しやすさ、「希望」が持てる業界への変革が求められています。
「新3K」は建設業界における人手不足解消への大きな一歩となることでしょう。
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