Construction column
建設コラム
建設コンサルタントの災害対策。国土強靭化5か年計画での取組を解説します
2023.7.18
社会インフラに大きく関わる建設業。なかでも建設コンサルタントは、社会資本整備の中で事業者のパートナーとして、事業者支援の役割を担っています。 国土交通省や一般社団法人建設コンサルタンツ協会では、社会資本整備に貢献する職業として、その重要性を広く知っていただくための活動をしています。 今回は、「災害」というテーマにおける建設コンサルタントの役割や国土強靭化5か年計画での取組について解説していきます。 図:内閣官房資料/国土強靭化への道筋としての連携型インフラデータプラットフォーム
目次
建設コンサルタントの災害対策と自然災害が多い日本
建設コンサルタントは、安心で安全に暮らせるまちづくりへの支援を行っています。 ここでは、建設コンサルタントの災害対策及び日本における自然災害について、さらに国としての対策である国土強靭化計画にも触れながら解説していきます。
強靭な国づくり・地域づくり
自然災害から人命・財産などを守るため、地域防災計画といった各種防災計画の策定や、地域の防災意識を高めるための防災訓練・避難訓練を行っています。 危険な場所と安全な場所を示した地図であるハザードマップの作成や災害対策に向けた予測、自然災害に備えて計画的かつ段階的に事前対策を取り組んでいます。
社会資本を活かし長持ちさせる
インフラ長寿化計画として、ITなどを活用し立案します。社会資本の多くは高度経済成長期に集中的に整備され、すでに50年を経過した構造物も少なくないためです。 維持補修や維持管理・更新へ取り組むことで費用の縮減や作業の省人化を検討します。 次世代社会インフラ用ロボットやセンサー技術、ドローンといった先進的なICT技術を用いて維持管理に係る新技術、長寿命化への工法など、社会資本を活かしています。 出典:国土交通省・一般社団法人建設コンサルタンツ/建設コンサルタントの仕事とその魅力
日本はなぜ自然災害が多いのか?
林野庁では、日本の自然条件として災害の起こりやすい地形について指摘しています。 日本は、険しい山が続く複雑な地形をしており、川の流れは狭く、急流が多い特徴があります。 一方、梅雨前線や台風などによる集中豪雨に加え、環太平洋地震地帯の中に位置するため地震や火山活動が活発な国でもあり、山くずれや土石流、地すべり、なだれなどの山地災害の危険を常に抱えているといえます。 出典:林野庁
激甚化する豪雨災害
内閣府による防災白書令和2年版では、豪雨災害について特集しています。 世界中で気象災害が頻発し、日本においても令和元年東日本台風などの豪雨被害が起きました。 この大雨の影響によって停電や断水などライフラインへの被害や鉄道の運休などによる交通障害が発生することで多くの住民に被害を及ぼすのです。 ここでは雨の降り方の変化が指摘され、自然変動の影響に加え、地球温暖化の影響もあるとされています。 出典:内閣府/令和2年度版防災白書
関東大震災から100年
令和5年版防災白書では、2023(令和5)年が、1923(大正12)年に発生した関東大震災から100年の節目の年ということで、当時の被害様相から復興まで特集されています。 今後は、南海トラフ地震や首都圏直下型地震などといった大規模地震の発生も切迫しています。 そのため、国を挙げて防災・減災、国土強靭化の取組を強化すべく「国土強靭化のための5か年加速化対策」を令和2(2020)年に閣議決定し、推進することになりました。 出典:内閣府/令和5年度版防災白書
国を挙げて取り組む「防災・減災、国土強靭化」とは?
前述通り、気象変動の影響や大地震の発生といった自然災害の影響やインフラの老朽化が加速度的な進行による社会経済システムの機能不全への懸念を解決するための取組です。
国土強靭化基本計画
国土強靭化基本計画は平成30(2018)年12月に立案されています。 「強くて、しなやかなニッポンへ」というスローガンがサブタイトルとして添えてあります。 理念には、いかなる災害などが発生しようとも、以下の4つを基本目標とし、「強さ」と「しなやかさ」を持った安全・安心な国土・地域・経済社会の構築に向けた「国土強靭化」(ナショナル・レジリエンス)を推進することとしています。 <4つの基本目標> ① 人命の保護が最大限図られること ② 国家及び社会の重要な機能が致命的な障害を受けず維持されること ③ 国民の財産及び公共施設に係る被害の最小化 ④ 迅速な復旧復興 出典:内閣府/国土強靭化基本計画
国土強靭化計画5か年計画
令和2(2020)年12月「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」として閣議決定されたこの計画は、令和7年度までの5年間で取組を加速化・深化させるために、15兆円程度の予算を想定しています。 デジタル技術を活用し、各種インフラを対象に対策をするとしており、基本的な考え方は以下の通りです。 ・あらゆる関係者が協働して行う流域治水対策 ・道路ネットワークの機能強化対策、鉄道、港湾、空港等の耐災害性強化対策 ・予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた早期対応が必要な施設への集中的な 老朽化対策 ・国土強靱化に関する施策をより効率的に進めるためのインフラ DX の推進 さらに重点的に取り組む対策として3つ挙げられています。 事前防災対策や予防保全、デジタル化の推進になりますが、建設コンサルタントが大きく関わることは言うまでもありません。
激甚化する風水害や切迫する大規模地震などへの対策
命を守るための事前防災・避難支援・強靭なネットワーク整備の加速化・深化や防災体制の整備が挙げられています。 流域治水対策や港湾における津波対策、防災拠点などの耐震診断の前倒し、道路ネットワークの機能強化対策といったインフラ整備、防災拠点や避難地となる防災公園の機能確保の対策などが対象です。
予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策
河川・ダム・下水道・道路施設・都市公園など主に老朽化対策としての予防保全を行うことになります。 すでに対応が遅れていると思われる老朽化施設や定期点検などにより確認された修繕が必要な橋梁・トンネル・道路付属物・舗装などの対策を集中的に実施するというものです。
国土強靭化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化などの推進
DXの活用や災害関連情報の高度化の加速化・深化になります。 ICT環境の整備や高度ネットワーク環境、国土交通省データプラットフォームなどの構築、河川データ集約化やダム、河川などとのネットワーク化対策、ドローン・衛星・カメラを活用した被災地状況把握などが対策として推進されます。
まとめ
今回は、「災害」というテーマにおける建設コンサルタントの役割や国土強靭化5か年計画での取組について解説しました。 国土交通省が発表している「建設投資の見通し」では、公共事業として「防災・減災の強化」を掲げており、建設投資額は増加傾向にあります。 参考コラム:建設業への転職の将来性は?オススメの職種も紹介!
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