Construction column
発注者支援業務は職場環境が整っているのは本当なのか?発注者支援業務の実態はどうなっているのか1日の流れで確認してみよう!
2023.8.31
発注者支援業務に従事する場合、みなし公務員となるため職場環境が整備されていることが知られています。
実際、発注者支援業務の求人には、「残業月平均30時間以内」や「完全週休2日制」と記載されているものが多く見られるようになってきました。
本コラムでは、発注者支援業務に従事する人の1日の流れを紹介しながら、発注者支援業務は本当に働きやすいのか、実態を見てみることにします。
目次
発注者支援業務の中身
発注者支援業務の業務内容はどのようなものがあるか、ご存知でしょうか。
一般的には、建設現場の施工管理などの監督業務を支援する「工事監督支援業務」を思い浮かべるかもしれません。
しかし、発注者支援業務で行われる業務はそれだけではありせん。ここでは、発注者支援業務の中身を見てみましょう。
積算技術業務
公共工事に必要となる材料や人員、専用機材などの費用を算出し、工事予定価格を算出のための基礎資料を作成、提供する業務です。
これらの資料を作成するために、発注者と工事全体のスケジュールや仮設工事の詳細を協議します。協議後には、現場の状況を確認し、積算に必要となる情報の収集行います。
これらをもとに、工事内容、工事履行のために必要となる労務・機材の総量をまとめ、工事コストを算出する業務です。
積算技術業務を行うにあたり、建築積算士の資格を取得しておくことで積算技術の専門知識を有することが証明できます。また、公共工事入札の際に有利に働くため、取得しておくと良いでしょう。
工事監督支援業務
工事監督支援業務を簡潔に表すとするならば、「施工業者が行った工事が、発注者の求めている品質に達しているかをチェックする業務」といえます。
詳しく表せば、発注者(国や地方公共団体、官公庁など)が、高い品質の工事目的物を完成させるためのチェック(履行確認)や、的確な工事が行えるように、発注者と施工業者の間に入り、調整・支援を行う業務です。
具体的には、材料の個数や規格の確認はもちろん、完成した構造物の出来形や品質検査等を行います。工事監督支援業務は工事の着工から始まり完成した工事目的物の引き渡しまでの全工程に関わる工事監督を支援する業務なのです。
また、施工計画や設計図書に記載がない不測の事態が起こった場合には、現場に赴き工事が遅滞なく進むように調整することもあります。
技術審査業務
技術審査業務は、「入札に関する資料の作成や、入札参加者が提出した資料の確認・整理」を行う業務です。
具体的には、発注する公共工事の工事概要に関する公告文書の作成や、参加資格、入札が行われる日時・場所、入札方法などが記載された「入札説明書」の作成を行います。
また、入札に参加する企業の参加資格の有無、工事担当を予定している技術者が資格・実績を満たしているか、工事実績の確認を行うのも業務の一環です。
さらに、技術評価を行うための分析や整理、資料作成も行っています。
発注者支援業務の中でも、施工とは違うイメージの業務といえるでしょう。
公物管理補助業務
公物管理補助業務は、河川の分野と道路の分野に分けて考えることができます。
河川が常に良好に保たれるように管理区域を巡視し、状況を把握する「河川巡視支援業務」、治水事業において国民の生命・財産を守る重要な使命を負う「ダム管理支援業務」が河川の分野です。
道路の分野では、道路法に基づいた各種申請等の審査・指導、道路の不正使用や不法占用の指導取締り等の補助的業務を行います。円滑な行政手続きを行うことで、適切な道路利用の推進に欠かせない業務です。
用地補償総合技術業務
公共工事等に必要となる用地の取得を、円滑かつ早期進捗を実現するために行われる業務です。
具体的には、用地の調査や権利者の特定、補償内容の照合と補償明細表の作成、公共用地交渉の方針の策定および資料作成、実際に権利者との公共用地交渉、移転履行状況の確認などを行います。
本業務においては、正確に迅速に対応することも重要ですが、中立的な立場で業務を行うことも重要です。発注者側の立場で交渉を進めてしまった場合、権利者からクレームが入る可能性が考えられます。
また、本業務には大きな責任が伴うため、責任感が問われることになります。
発注者支援業務1日の流れ
ここからは、発注者支援業務に従事した場合の1日の流れを見ながら、発注者支援業務の実態を考えてみましょう。
ここで紹介するのは、発注者支援業務のメインとなる「工事監督支援業務」に従事してた場合を想定しています。
発注者支援業務従事者の1日の流れ
①8:00〜 出社/メール・資料等チェック
出社時間は8:00となっており、公務員の登庁時間と変わりがありません。
出社後は、発注者からの連絡事項等がないか、メールチェックを行います。また、図面や資料をチェックし、必要があれば発注者へ送る資料等を作成し送付します。
②10:00〜 担当現場にて調査、打ち合わせ
メールや資料のチェックなどのデスクワークが終わると、担当現場へ向かいます。担当現場では、施工状況のチェックを行い、必要があれば調査等を行います。
近年は、建設現場もICT化が進んでおり、チェックの際にはドローンを利用するなど、時間の短縮が図られているため短時間での調査も可能です。
現場で発注者や施工業者との打ち合わせが入ることもあります。
国土交通省の発注者支援業務では現場を兼務することがあるため、この後、別の現場へと向かうこともあります。
③12:00〜 昼休憩
特段、急ぎの対応がなければ、昼休憩を取ることが可能です。
④13:00〜 立会
設計図書において立会が必要と指定された現場がある場合、その現場において立会を行います。
⑤15:00〜 現場確認
別現場において、保安対策施工後の状況の確認を行います。その際には、現状を記録するために撮影を行います。
⑥16:30〜 現場事務所での打ち合わせ
最後の担当現場にて施工業者と打ち合わせ。工程表をチェックしながら、施工状況を確認します。
⑦17:00〜 図面チェック/資料作成
現場から戻り、デスクワークを行います。担当工事の図面をチェックしたり、資料の作成を行います。
⑧18:00〜 帰宅
上記の通り、工事監督支援業務では現場に出ていることが多いといえるでしょう。しかし、実際の施工業務を行うのではなく、現場の確認や立会、打ち合わせなどがメインです。また、調査などではICT化も進んでいることから時間短縮も進んでいます。
今回は残業が発生していますが1時間程度であり、厳しい残業を求められる訳ではないことが分かります。発注者支援業務の実態として、職場環境は非常に良いといえるのではないでしょうか。
ただし、工期の遅れがある場合には、残業時間が増えることが考えられますので、そのように認識しておいてください。
発注者支援業務に係るデメリットとは
発注者支援業務の実態について考える際、デメリットも確認しておきましょう。
発注者支援業務に従事する人が挙げる、発注者支援業務のデメリットには「達成感がない」というものがあります。
発注者支援業務は、施工業者や現場監督、職人などのように実際に現場に出て仕事をする訳ではありません。そのため、実際に構造物をつくったという達成感が得られないと感じる人が多いようです。
資格を持っていないとできない業務があることをデメリットに挙げる人もいます。特に工事監督支援業務では、技術士や土木施工管理技士などの資格を有していないと従事できません。自分のしたい業務ができないという点もデメリットといえるでしょう。
また、役所寄りの仕事になってしまうこともデメリットだといいます。発注者支援業務は、いかにルールを守らせるかに重点を置くため、現場のことを考慮することよりもルールの尊重を重視する傾向にあります。
そのため、何かを作り出すという、創造的な仕事がしたいと考えている人にとって発注者支援業務に従事することはデメリットと考えられるのかもしれません。
発注者支援業務は誰もが働きやすい環境作りに取り組んでいます
現状として、発注者支援業務はつらい仕事だという意見も散見されますが、ここまで見てきた通り発注者支援業務の実態としては、働きやすい仕事だと言えるでしょう。
確かに、工期が間に合わない、災害復旧時には休日出勤があるなど、労働環境が厳しくなることはあります。しかし、これらの対応は、国民の生活を支える基盤づくりに携わっている以上、仕方のないことかもしれません。
基本的に、発注者支援業務は公務員同様の労働時間や休日が確保されており、働き方改革の推進もあって厳しい残業もほとんどないのが現状です。
公共工事に携わってみたいけれど、「労働環境が厳しいところは嫌だな」と考えている方は、発注者支援業務を選択肢として考えてみるのはいかがでしょうか。
発注者支援業務の実態は、時にはつらいことがあるかもしれませんが、誰もが働きやすい環境作りに取り組む職場なのです。