Construction column
工事発注における「技術審査」とは?流れや守秘義務について解説
2023.4.28
公共施設の工事では、施工内容や使用した建材などの正当性が求められます。
公共機関は業者の応募受付から審査資料の確認・技術評価などを行い、落札者を決定します。
落札者を決定する際、公共機関はどのようなポイントを見ているのでしょうか。
本記事では、工事発注における「技術審査」とはどのようなものなのかについて、流れや守秘義務と併せて解説します。
技術審査業務の守秘義務について
「技術審査業務」とは、競争参加資格確認申請書の分析・整理、ヒアリング記録作成などをもとに落札者を決定する業務です。
一般的に公共施設の工事は特定の業者に声をかけて工事を依頼するのではなく、公平性を保つために公募という形式で業者を募集します。
下記、工事入札契約手続きまでの流れです。
公募から受付まで
- 公募
- 応募
- 受付
技術審査業務
- 工事発注資料の作成
- 公告
- 競争参加資格確認・申請書の提出
- 確認・整理・分析
- 審査資料作成
評価・審査
- 技術評価
- 入札
- 落札者の決定
守秘義務の要項一覧
公共機関では機密性を確保するために、落札者に対して下記の守秘義務を命じています。
第三者に情報を漏えいしない
落札者は、業務の内容や実施の過程で得た情報を第三者に漏らしてはいけません。
建築後の建物を第三者に見せない
落札者は建設した建物を撮影した写真を見せたり、同じような建物を建てたりしてはいけません。
ただし、事前に公共機関に了承を得ている場合、許可を得られることがあります。
情報の無断利用の禁止
落札者は公募で受注した業務の情報は業務計画書や、業務組織計画に記載されている方以外には秘密とします。
また、落札した建物を建てること以外に得た情報を使ってはいけません。
情報の転用禁止
落札者は、発注者から対象となる建物に関する情報を得た際、業務が終了したあとも第三者に情報を転用してはいけません。
情報漏えいの防止
落札者は公共機関を得た情報を業務中・業務後にかかわらずアクセス制限やパスワード管理によって、情報が漏えいしないよう適切に管理する必要があります。
また、発注者の許可なく情報の複製や転送を行ってはいけません。
情報の返却・破棄
落札者は、対象の建物の建設が完了したあとは受け取った情報を確実に返却・消去・破棄する必要があります。
情報漏えい時の対処法
落札者は万が一外部に情報が漏えいした場合、速やかに発注者へその旨を伝えなければなりません。
このように、公共施設を建設する際は情報漏えいに関して、さまざまな注意点があります。
そのため、公共施設の公募に参加する前に、自社のセキュリティ状況を確認しておきましょう。
工事入札手続きの流れ
こちらでは、工事入札手続きの流れをご紹介します。
建設業許可を取得
建設業許可は、500万円未満の工事を行う際は取得しなくても問題はありません。
しかし、公共施設の工事には金額・種類・規模にかかわらず建設業許可が必要です。
小規模な工事を行ってきた事業者が入札する際は、建設許可証を取得するところから始めましょう。
経営事項審査申請を行う
経営事項審査とは、決算書などをもとに経営状況を点数化することです。
入札に参加する業者は、毎年決算終了後に経営事項審査を行う必要があります。
公共機関は、途中で経営破綻に陥ったり工事が滞ったりする可能性が低い、できるだけ安定した業者に工事を依頼したいと考えるものです。
経営事項審査を受けるためには、決算終了後に都道府県知事や国土交通省などが管轄する行政庁に決算変更届を提出します。
審査の届け出を提出したあと、財務諸表を経営状況分析機関に送り、経営状況を点数化してもらいます。
その後、経営状況分析結果通知書が届けられたら、その通史所と併せて経営規模等評価申請書を提出します。
公募に参加する
これまでご説明した許可や申請を行ったあとは、公共機関が実施している公募に参加します。
申請の受付期間は公共機関や建物などによって異なるため、事前に受付期間を確認しておきましょう。
下記、公共機関の入札の流れです。
事業者登録
入札に参加するためには、国や自治体などが定める事業者登録を行う必要があります。
従来であれば自治体などで紙媒体によって申請する必要がありましたが、近年ではオンラインによる事業者登録が導入されています。
そのため、以前よりも申請にかかる時間や負担が少なくなりました。
ただし、事業者登録は2年ごとに申請を行う必要がある点には注意しましょう。
入札説明会に参加する
入札に参加する前に、公共機関が実施している入札説明会に参加しましょう。
この説明会では対象となる施設の情報や価格などの情報が記載されています。
その場で入札を求められることはないため、説明会後に得た情報を自社に持ち帰って検討できます。
入札に参加する
説明会で得た情報を検討した結果、建設したいと思われたら入札に参加しましょう。
必要な書類を準備し、入札価格を決めてから入札申請を行います。
注意点として、低すぎる入札価格の場合は落選する可能性が高い傾向にある点です。
公共機関によっては、入札価格が低すぎると低品質の工事や資材を使われると判断されることがありあります。
入札者から得た情報をもとに、公共機関は情報の確認・照合や審査資料を作成し、複数の業者から発注業者を決定します。
受注・契約締結
公共機関が経営状況や建設用鋼などさまざまな観点から判断し、業者を決定します。
契約内容は事前に提示されているため、その内容に従って契約を締結しましょう。
建設技術審査証明の詳細
公共機関に提出する書類のひとつには、「建設技術審査証明」と呼ばれるものがあります。
建設技術審査証明は新たな建築物や設備をはじめ工作物にかかわる建築技術で、下記のものが対象です。
- 建築物等の施工
- 材料
- 部材
- 設備
- 器具
- 設計
- 計画
- 構法
- 維持管理
- 検査 など
また、既存施設の維持保全や改修、解体に使われる機械や設備なども対象です。
こちらは新しい建設技術の活用促進に寄与するために、その技術を客観的に証明し、普及することを目的としています。
こちらの証明は建設技術審査証明協議会に参加している14の法人が実施しています。
審査内容については公言されていませんが、依頼者により提出された資料をもとに、国などが定める技術指針等を参考に審査します。
審査を通過したあとは審査証明書・概要書・報告書を作成・交付してから受け取ることができます。
また、こちらの証明を得られることで、下記の普及活動に参加できます。
- 概要書を国土交通省、関係公団、地方自治体等へ配布
- JICEホームページ(https://www.jice.or.jp/)に掲載
- 建設技術審査証明検索システムへ掲載
- 新技術展示会を開催
必要な費用は申込料が10万円、審査料が300万円(それぞれ税別)が必要です。
対象技術の具体例
下記、建設技術審査証明の対象となる技術の具体例です。
- 橋梁の架設工法にかかわる開発技術
- 基礎工の施工法にかかわる開発技術
- トンネルの施工法にかかわる開発技術
- 土工の施工法にかかわる開発技術
- 地盤改良工の施工法にかかわる開発技術 など
参考ページ:国土技術研究センター「建設技術審査証明事業」
(https://www.jice.or.jp/review/proofs/civil)
まとめ
今回は工事発注における「技術審査」とはどのようなものなのかについて、流れや守秘義務と併せて解説しました。
技術審査は公共施設を建設する際、事業者や使用する技術・建材などが適切なのかを判断する審査です。
入札者は公募から受付、審査などを経て多くの業者のなかから選定されます。
公共施設の建設を行う際、さまざまな情報を得ますがそれらは外部に漏れないように適切な環境で管理する必要があります。
工事手続きの流れは建設業許可や経営事項審査申請を行ったうえで入札に参加します。
また、公共施設の入札に参加する際は建築物等の施行や材料などが問題ないものの証明である「建設技術審査証明」が求められます。
発注者支援業務の直接的な業務内容とは関係のない範囲ではありますが、公共工事の受発注の背景を知ると、日々の業務の関わり方が変わってくるのでくるのではないでしょうか?