日本の公共事業を技術面からサポート!総合評価落札方式における「技術審査業務」とは何?その職務内容を解説します!
公共工事の入札は、小規模な工事などの一部を除いて、現在は総合評価落札方式で行われるのが普通となっています。
総合評価落札方式では「金額」と「技術」の面で審査が行われ、その技術面での審査を行うのが「技術審査業務」です。本記事では、技術審査業務の職務内容について解説します。
目次
技術審査業務とは?
従来、公共工事の入札においては「金額」に比重が置かれていたため、いかに安く抑えられるかが重視されていました。
しかし、これでは入札における価格競争が行われる中で工事の品質低下、環境破壊などが行われるのではないかとの懸念があったのです。それを未然に防ぐことを目的に導入されたのが総合評価落札方式でした。
総合評価落札方式では金額だけでなく「技術」面も審査されることになりました。参加者から提出される技術的提案は、テクニカルな内容の評価を行う必要があり、非常に手間がかかります。
この膨大な技術的な提案の確認を行い、審査・処理をするための業務が「技術審査業務」です。具体的には、入札参加者から提出された書類に関して、会社としての工事実績や配置予定技術者の資格・実績、技術提案の妥当性や提案内容を履行できる信頼性があるかどうかなどを、各評価項目に基づいて審査や分析を行うことになります。
技術審査業務の内容(公告前)
ここからは、技術審査業務の具体的な内容を解説します。まずは、公告前に行う技術審査業務の内容からです。
発注工事入札方式等の打合せ
業務については、発注者である国や自治体から、受注者である委託事業者に対し審査対象である1工事ごとに期限が設けられ、その指示によって行われます。
公告前の公共工事について、発注者側である国や自治体は、発注工事の入札方式などについて、技術審査業務の委託契約を結んだ事業者と打合せを行います。
具体的な内容は、入札方式を一般競争入札にするのか、工事希望型競争入札(指名競争入札方式の一方式)にするのかや、入札に必要な条件、資料、入札書などの様式についてです。
複数の工事について、まとめて打合せを行うこともあります。
工事発注資料の作成
発注工事の入札方式等の打合せが済んだら、次に行うのは打合せで決まった内容で工事発注資料を作成する業務です。
技術審査業務を委任された事業者は、発注者から提示された入札方式や、その様式、条件、資料をもとにして、以下の資料の作成を行います。
- 一般競争入札方式によって発注する際の工事における公告文(案)及び入札説明書(案)
- 工事希望型競争入札方式によって発注する際の工事における競争参加資格確認申請書等提出要件書(案)
成果品の提出
技術審査業務の委託を受けた事業者は、作成した広告文(案)及び入札説明書(案)または、競争参加資格確認申請等提出要件書(案)を成果品として提出します。
ここで注意してほしいのは、たとえ業務完了前であったとしても、指定された期日までに成果品を提出しなくてはいけないという点です。
指定された期日までに、必ず成果品を提出することを念頭に業務に臨むようにしましょう。
成果品の提出が完了すると、公告が行われ入札参加者による応募が開始されます。入札参加者が「競争参加資格確認申請書」を提出し、それが受け付けられると、次の技術審査業務へと進むことになります。
技術審査業務の内容(公告後)
上記の内容までが、公告前における技術審査業務の内容でした。ここからは、公共工事が公告され、入札参加者の応募・受付が終了した後の業務の解説を行います。
業務量は、公告前に比べても多くなりますので、しっかりと理解しておきましょう。
発注工事入札条件等の打合せ
業務については、公告前と同様に、発注者である国や自治体から、受注者である委託事業者に対し審査対象である1工事ごとに期限を設け、その指示によって行われます。
公告後の業務は、参加資格要件等の入札条件等についての打合せや、発注者側からそれらを確認・整理するための資料が貸与され、それをもとに業務が開始されます。
複数の工事について、まとめて行う場合や公告前の打合せの際に実施されることもあるので、そのことを念頭に置いておきましょう。
現地調査
発注工事入札条件等の打合せが終わると、現地調査を行う場合があります。現地調査は対象となる工事の現状を把握するために行われ、その調査結果を写真や図面にとして作成し、確認・整理業務の参考にします。
ただし、現地調査は発注者である国や自治体と、受注者である技術審査業務の委託事業者の協議で取り止めることも可能です。現地調査が必要な場合は、発注者からの指示を受けて行うことになります。
競争参加資格の確認・整理
打合せや現地調査が完了し、下準備が整ったら、発注者から提示された条件や打合せ時に貸与された資料等をもとにして下記のことを確認します。確認が終わった後は、適否について根拠となる資料とともに一覧表を作成して整理をしていきます。
・企業が実施した同種工事における実績等の確認
企業が実施した同種工事の実績や、配置予定技術者の資格、同技術者の同種工事における実績等を確認します。
・一般競争参加資格等の確認
一般競争参加資格や予算決算及び会計令第70条・第71条規定への該当していないか(契約提携能力を有するかどうかや、暴力団員ではないか、不正を行っていないかなど)、会社更生法に基づく更生手続開始の申立を受けていないか、指名停止措置のを受けていないか、警察当局からの排除要請を受けていないか、本支店・営業所の所在地等の確認を行います。
総合評価項目の分析・整理
競争参加資格の確認・整理が終われば、最後に総合評価項目の分析・整理を行います。
具体的には、対象となる工事について、入札参加者から提出された総合評価に関する資料の確認が行われます。その際に、記載事項の妥当性や入札参加者の工事履行の信頼性等について、発注者から指示されている条件にもとづいて分析・整理し、その結果を踏まえ以下の資料を作成します。
・発注者から貸与された確認・整理を行うための資料をもとに、技術提案及び施工計画に関して、個別の提案項目ごとの分析結果を簡潔にまとめて整理した一覧表とその根拠資料。
・技術提案及び施工計画を含む全評価項目に関して、分析した結果を簡潔にまとめて生入りした一覧表とその根拠資料。
・ヒアリングに向けた確認事項を整理したもの。(発注者が工事入札参加者に実施するヒアリングで確認が必要となる事項を整理したもの)
成果品の提出
技術審査業務の委託を受けた事業者は、作成した現場調査の結果、参加資格の確認・整理してまとめた結果、総合評価項目を分析・整理してまとめた結果を提出して、技術審査業務は完了します。
公告前と同様、業務完了前であったとしても、指定された期日まで成果品は提出しなくてはいけませんので注意しましょう。
技術審査業務が完了すると、入札参加者と技術評価の決定が行われ、入札、落札者の決定と進んでいきます。
まとめ
公共工事は、道路やトンネルなどのインフラ整備や、学校や教育施設など、国民の生活を支える重要な施設を作る工事です。
その工事を提供する事業者の工事品質が低いものであった場合、大きな損害が発生してしまう可能性があります。
技術審査業務は、公共工事を行うにあたり入札に参加する事業者が、しっかりとした技術や実績があるのか、工事を履行する信頼性があるのかを見極める重要な業務と言えるでしょう。
技術審査業務は、入札参加を表明した事業者から提出された膨大な量の技術提案を、一つ一つ、丁寧に審査・処理を行うという大変な業務です。しかし、この業務があるからこそ国民が安心して利用できる公共物が作られるのだと考えれば、非常にやりがいのある業務と言えます。
本記事が、技術審査業務の職務内容を理解していただく一助となり、技術審査業務が公共工事の信頼性をしっかりと守る働きをしているということを理解していただければ幸いです。