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建設コラム

日本の土木を裏側から支える|発注者支援業務の魅力と役割

2023.9.30

発注者支援業務

発注者支援業務は、公共事業などの大規模プロジェクトにおいて、発注者側のパートナーとして協力するコンサルタント業務です。通常、官公庁の事務所で働き、公務員と共同で業務を遂行します。発注者支援業務は、土木施工管理技士の資格が必須ではないものの、現場経験が重要です。また、工事発注や監督支援など、プロジェクトの前後に関わる業務も含まれ、多様な経験を積む機会があります。近年では、事業間の調整を行う業務も注目されています。そんな発注者支援業務の魅力と役割について解説します。

発注者支援業務の働く場所とは?

発注者支援業務を行う場所は、主に工事を発注する国や地方自治体の事務所が中心です。国土交通省を例にあげて詳しくみていきましょう。

事務所の種類

まず、国土交通省には本省と地方整備局があります。

地方整備局は「東北地方整備局」「関東地方整備局」「北陸地方整備局」「中部地方整備局」「近畿地方整備局」「中国地方整備局」「四国地方整備局」「九州地方整備局」の8つです。

関東地方整備局の場合は、東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県・茨城県・栃木県・群馬県・長野県・山梨県の1都8県が含まれています。

また、各地方整備局には複数の事務所があります。

主な事務所としてあげられるのは「河川事務所」「道路事務所」「河川国道事務所」「技術事務所」「公園事務所」「営繕事務所」「港湾・空港事務所」です。

関東地方整備局の場合は、51の事務所・管理所があります。

事務所・管理所の中でも、河川事務所と道路事務所の数が多いのが特徴です。

勤務地

各地方整備局の事務所・管理所の中には出張所があります。

発注者支援業務が勤務をするのは、出張所である場合が多いです。

たとえば、関東地方整備局管轄の勤務地の場合は、約150以上の勤務地があげられます。

発注者支援業務の具体的な仕事内容とは?

発注者支援業務

「発注者支援業務」には「積算技術業務」「工事監督支援業務」「技術審査業務」の3つがあります。

積算技術業務は、積算のための現地調査を実施し工事発注図面と数量計算書などを作成します。

積算に必要な資料を作成し、積算システムデータを入力するところまで積算技術業務で行う仕事です。

積算技術業務の仕事が完了した後は、発注者の担当職員が発注図書を確定し、予定価格の作成を行い入札・契約に進みます。

工事監督支援業務は、工事契約の履行に必要な資料を作成します。

また、工事施工状況の照合を行ったり地元・関係機関との協議・調整に必要な資料を作成したりするのも工事監督支援業務が担当する仕事です。

遠隔臨場を含む工事検査などでの臨場も行います。

もし、設計変更がある場合は設計変更要協議資料も作成する必要があります。

工事監督支援業務を行う上で注意すべきことは、工事監督支援業務の担当技術者は管理技術者の指揮・監督のもと業務を行い、工事受注者に対して指示・承諾は行えないということです。

技術審査業務は、入札公告(案)や入札説明書(案)などの工事発注資料の作成を行います。

工事入札参加の際に提出された施工計画・技術提案・工事実績・配置予定技術者などの競争参加資格確認申請書類の分析と整理を実施し、審査資料を作成します。

公物管理補助業務

「公物管理補助業務」は「河川巡視支援業務」「河川許認可審査支援業務」「ダム管理支援業務」「堰・排水機場等管理支援業務」「道路許認可審査・適正化指導業務」の5つです。

河川巡視支援業務は、流水・土地の占用状況を確認し違法行為がないかを巡視します。

堤防や堰・水門等構造物などの状況を把握したり、不定住者などの生活状況やイベントなどの利用状況など空間利用状況を把握したりもします。

また、河川の水質など自然環境の状況を把握するのも重要な業務です。

河川許認可審査支援業務は、河川関係法令等に基づく各種申請書類の受領と審査・実施状況の確認を行います。

河川現況台帳や不法占用台帳、構造物台帳などを記載したり修正したりするのも仕事の1つです。

不法占用や放置車両などがないかを把握するために、現地立会を行う場合もあります。

ダム管理支援業務は、ダムや貯水池、関連設備などの巡視を行い記録の作成や整理を行います。

ゲート操作時の補助やダムの観測データの整理・記録の作成、ダム管理資料や関係機関協議資料を作成するのも重要な業務です。

水位や雨量情報などのダム操作などに関する情報を確認したり、受理したりすることもあります。

堰・排水機場等管理支援業務は、堰や排水機場などの状態を監視したり、ゲートや管内電源設備などの点検や記録の作成をしたりします。

道路許認可審査・適正化指導業務は、道路法に基づく申請書類の受付と審査のほか、道路管理に関しての苦情に対して内容を確認するために申立者と現地立会を行う業務です。

道路台帳、必要な図面などの点検と修正を行うこともあります。

また、災害が発生する恐れがある場合は、緊急時の業務に対応することも重要です。

道路の不正利用や不法占用がないかの状況把握、適正化に係る道路台帳の整備も行います。

用地補償総合技術業務

用地補償総合技術業務は、補償金額算定書の損失補償基準等との適合性を照合し、公共用地交渉方針の策定から公共用地交渉用資料の作成までを担当します。

また、権利者に対する公共用地交渉の実施のために、調書の内容説明や補償内容の説明、補償契約書案の説明と契約の承諾を行うのも重要です。

発注者支援業務にはどんなスキルや資格が必要なのか?

発注者支援業務は、公共事業が主な舞台で行われます。この仕事では、一般的に土木施工管理技士の資格を持っていることが求められることが多いです。土木施工管理技士の一級資格を持っていると、より多くの求人から選択肢が広がります。また、難しい業務に挑戦し、発注者から高い評価を得ることで、昇進や昇格の機会も増えるでしょう。

仕事内容には、設計や計画段階の業務も含まれることがあります。そのため、CADソフトなどの操作スキルを持っていることが求められることもあります。幅広いスキルを持つことで、さまざまな業務に対応できます。

また、建設コンサルティングの資格であるRCCM(Registered Consulting Construction Manager)も注目されています。この資格は土木工事の専門家としての知識や技術を認定するもので、国土交通省でも重要視されています。発注者支援業務のように中立的な立場で管理業務を行う際に役立つでしょう。

要するに、発注者支援業務は土木施工管理技士としての経験が重要です。経験や資格を整理し、自分のアピールポイントとして活用しましょう。

さらに、発注者支援業務の経験があると、即戦力として評価されることが多いです。自社事務所ではなく、クライアントの事務所で働くため、育成が難しい場合もあります。しかし、土木施工管理の経験があれば、多くの企業で歓迎されます。また、特定の分野に詳しい場合は、その経験も活かせます。鉄道、高速道路、トンネルなど、自分の専門分野を強化して仕事を探すことをお勧めします。

最後に、自分が得意な分野の資格を取得することも重要です。RCCMやコンクリート技士、測量士など、自分の興味や目標に合った資格を取得し、さまざまな仕事の機会を広げましょう。

発注者支援業務に向いている人とは?

発注者支援業務は、建設プロジェクトにおいて発注者と工事受注者の架け橋として、プロジェクトの円滑な進行と成功に欠かせない役割を果たします。この業務には、正確性、柔軟性、コミュニケーション能力など、さまざまな資質が求められます。では、どのような人物が発注者支援業務に向いているのでしょうか。以下に、発注者支援業務に適した人物像を詳しく探ってみましょう

厳密な正確さ

発注者支援業務では、設計図や現場の実際を正確に照らし合わせ、細部に至るまでミスのない仕事が求められます。建設プロジェクトにおいて、正確な情報提供は極めて重要です。したがって、仕事を丁寧かつ正確に進める能力が不可欠です。

柔軟性

現場では予測できない問題が頻繁に発生します。施工計画の変更や予期せぬ状況に柔軟に対応し、効果的な解決策を見つける能力が求められます。変化に適応できる姿勢は、業務の成功に欠かせません。

優れたコミュニケーション能力

発注者支援業務では、発注者、工事受注者、監督支援業務受注者など、多くのステークホルダーと協力してプロジェクトを進める必要があります。特に監督職員との信頼関係を築くために、優れたコミュニケーション能力が不可欠です。円滑なコミュニケーションは、プロジェクトの成功に直結します。

発注者支援業務に取り組む人物には、これらの資質が備わっていることが求められます。正確性、柔軟性、コミュニケーション能力を活かし、建設プロジェクトの円滑な進行に貢献することで、この重要な役割を果たすことができるでしょう。

発注者支援業務は忙しいのか?

発注者支援業務は、具体的な業務内容や環境が、担当する自治体によって異なることがあります。以下に、一般的な仕事環境について説明します。

CADを用いた図面作成と修正

多くの場合、設計図や図面の作成と修正にCADソフトウェアが使用されます。これにより、建設プロジェクトにおける設計図を正確に作成し、必要に応じて修正できます。

数量計算と積算業務

発注者支援業務では、数量計算書をチェックし、積算システムを使用して必要な計算を行います。これにより、建設プロジェクトの予算管理が行われます。

デスクワークが主

一般的に、発注者支援業務はデスクワークが主要な業務となります。現場での作業や監督業務は比較的少ないため、オフィスでの業務が中心です。

給与と労働環境

給与面では、臨時職員として働くため、一般的な公務員や民間の正社員に比べてやや低めの給与水準が一般的です。ただし、契約社員と比較すると給与は高めです。休日や残業については、土日祝日は休みが多い傾向にあり、残業も比較的少ない場合が多いです。

チームワークとコミュニケーション

発注者支援業務では、発注者、工事受注者、監督支援業務受注者など、さまざまなステークホルダーと協力してプロジェクトを進める必要があります。コミュニケーション能力が求められ、特に監督職員との円滑なコミュニケーションが重要です。

職場環境の違い

発注者支援業務の職場環境は、自治体によって異なります。一緒に働く職員や上司との関係、仕事の雰囲気などが異なるため、職場選びも重要なポイントと言えます。

まとめ

今回の記事では、日本の土木の裏側を支える発注者支援業務の魅力や具体的な業務内容について解説しました。土木関係の仕事の中でも非常にやりがいや満足度の高い業務内容となっていますが、仕事とプライベートのワークライフバランスも取りやすいなど魅力が多い業種となっています。

発注者支援業務に興味がある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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